この記事をまとめると
■数多くのスーパーカーに乗ったライターが動かすのが大変だったクルマを振り返る
■乗りづらいと言われているモデルでもレストア済みであれば案外普通に乗れる場合もある
■ヘッドセットがないと車内で会話ができないようなスーパーカーもあった
数あるクルマのなかで動かすのが大変だったクルマを振り返る
自動車メディアの世界に入り、クルマ磨きやクルマ運びの仕事に始まり、そのままいつの間にか編集者になって、そしてモータージャーナリストなどという仕事に就いてから30年あまり、たしかにいろいろなクルマに乗ってきた。とくにスーパースポーツやハイパーカーと呼ばれるモデルのステアリングを握らせてもらうことも多かったから、これは走るどころか動かすのも大変だわ、とキャビンの中でひとり冷や汗を流していたことだって何回もある。ここではその代表的な3車をあげてみたいと思うのだが、まずはちゃんと条件はつけておくことにしたい。
それは新車か、それに近いコンディションでドライブしたということだ。たとえば、ミウラのクラッチが死ぬほど重く感じて足が攣りそうになったとしても、以前イタリアで試乗させてもらったポロ・ストリコ(ランボルギーニのクラッシック部門)がフルレストアしたミウラには、そんな印象は一切なかったし、新車に乗ったことがあるとないとでは、悔しいけれど評価はまったく異なる。したがって自分の場合、1980年代半ば以前に生産を終えたモデルは、ここでバッサリと選考対象からは外させていただこう。
ではまずは3位の発表から。これは1990年に発表された「ジャガーXJR-15」だ。一応はオンロード走行も可能なジャガー・ブランドの乗用車として発表されたXJR-15だけれど、実際の開発はTWR(トム・ウォーキンショー・レーシング)によるもの。
ベースは当時のグループCカー、XJR-9となれば快適さなど最初から期待する方が間違っている。ジャガーという車名はただのブランドだ。そこには快適な乗り心地も、ドライバーとパッセンジャーがゆっくりとくつろげる空間もない。会話を楽しむには左右一対のヘッドセットを使わなければならないくらい。ミッドの6リッターV型12気筒エンジンもXJR-9のそれをデチューンしたもの。もちろんフルスロットルを試すには至らなかったが、グループCカーとはかくもドライバーに厳しいモデルなのかと、そのオンロード版ともいえるXJR-15でも感じたことを、あの爆音とともにいまでも覚えている。