まだまだ探し続ける自分に似合う「カッチョいいクルマ」! 自動車ジャーナリストのクルマ選びの決め手【石橋 寛編】 (2/2ページ)

こだわりを持ったクルマ選びは簡単そうでじつに難しい

3:肝心なところの作りこみ

 今では考えられないことですが、輸入車のなかにはとんでもない不具合を露呈するクルマが少なくありませんでした。たとえば、在籍していた出版社のトップが乗っていたランチア・テーマ8.32。あのフェラーリV8エンジンをエンジンルームに詰め込んだ「優雅な狂気(または凶器)」。社内ドライビングレッスンの際、果敢にもトップは8.32でABSテストをしたのですが、正常に作動したのはいいものの、その後いっこうにエンジンがかからなくなるというシーンを目の当たりに。同じく、8.32の運転席に備わっていた電動シートを後ろへ下げていった際、どこまでいっても止まらず、最後はシートがレールから「ガタン」と落ちた、とかね(あわてて前に戻すボタン押したら、何事もなかったかのようにレールにはまったというのも驚きです)。

 また、今をときめくメルセデスだってそうでした。ウインドウのスイッチ、左右をいっぺんに押すとヒューズ飛んじゃうとか(思うに、ポーランド製スイッチの不良が原因だったかと)。

 よく走ってくれるクルマこそ、ささやかなマイナートラブル(でもないか)で印象が台無しになってしまいがち。品質管理が徹底されている現在であれば、杞憂であることは否めませんが、ネットやらなにやらで流れている風評を見る限り「まだまだ安心できねーな」と兜の緒を締めたりなんかしているのです。

4:とにもかくにもカッチョいいクルマ

 これは、なにもフィオラバンティのデザインでなくとも、はたまたサーキットの狼に出てこなくとも、本人が「カッチョいい」と認め、まわりも納得できたらそれでいいのかと。たとえば、訳ありチョイ悪おやじがダイハツ・ミゼットⅡに乗っていたとしても、愛人の実家が営む酒屋の配達を密かに手伝っていたりしたら「ちょっとした美談」であるのと同時に、訳を知った周囲は「ミゼットⅡ、カッチョよく見えてきた!」となるかもしれません。あるいは、10年落ちでヘッドライトが白茶けているプリウスでも、職場のいびりに耐え忍んでいる父ちゃんが上役や周囲に気を遣って「買い換えない」のであれば、それはそれでカッチョいい。

 つまり、オーナーの人物像にマッチしてさえいれば、どんなクルマだって輝き、胸のすくような走りだってしてくれるかもしれないのです。逆に、たいした才もないのに親の金でケーニグセグ乗ってたって「ケッ」と道に唾吐かれるのがオチ。

 となると、カッチョいいクルマ、すなわち自分に似合うクルマを見つけるのはそれほど容易なことではないでしょう。かくいう筆者もまだまだ道半ば。皆さんと一緒にカッチョいいクルマを探し続けていけたらいいなぁ、などと思ったりなんかして。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

文筆業

愛車
三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
趣味
DJ(DJ Bassy名義で活動中)/バイク(コースデビューしてコケまくり)
好きな有名人
マルチェロ・マストロヤンニ/ジャコ・パストリアス/岩城滉一

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