リヤの接地感と安定性がまるで違う!
次に、シビックタイプRに試乗した。まずはノーマルウイングで。
コースはウエット。コース脇には苔があってもの凄く滑るし、ところどころ川がコースを横断していて、ここもドキッとするくらい滑る。
そんなわけで、いつもより慎重に走り出した。気付いたのは、タイプRはサスペンションの動き出しがしなやかに動くようになっていて、ウエット路面でタイヤが路面を良くとらえてくれるということ。ウエットグリップの良さからくる安定感があり、探りながらだがアクセルを深く踏み込むこともできた。
ウエット路面でタイプRの進化に感心したのだが、逆にこれでウイングの差が出るものなのか不安になってくる。
ホンダアクセスのテールゲートスポイラーは2㎏の超軽量カーボン製で3D形状。スポイラー上面センター部をガーニーフラップ形状とし、ダウンフォースを高めるとともに、サイドプレートの角度をAピラーと合わせている。ちなみに、ガーニーフラップの長さやサイドプレートの大きさ、角度によってダウンフォースだけでなく直進性や、直進からターンインにかけてのスムースなクルマの動きにも影響を与えるのだという。
そして、このウイングの裏面後端にシェブロンが付けられている。
ホンダアクセスでは、リヤのダウンフォースを若干高めることで前後の空力バランスを整え、リヤタイヤのグリップ性能をより多く使って安定性を高めているのだという。しかも実効空力レベルでの性能を作り出しているという
テストは、ウイングをその場でメカニックによって交換してもらい同一車両で試乗した。
不安に思ったのがアホみたいに思えてくる。走り出した瞬間からもう違うのだ。まさしく実効空力性能の向上が実感できる。しかも60km/hくらいでコーナーに進入していくときのクルマの落ち着き感が明らかに高くなっているし、クレスト(丘)の頂点でアクセルを戻したときの、それでも安定感を失わないリヤまわりの安定性に驚かされた。
しかも、ノーマルウイングでは探りながらアクセルを深く踏み込んでいたのだが、ホンダアクセスのウイングだとアクセルの踏み込み量が2割がた多いのだ。その分安心感があり、安定感があり、実際にしっかり路面をとらえているので、蛮勇を振るうことなくハイペースの走行が可能だった。
ハイペースのブラインドコーナーで不用意にアクセルを素早く多く戻し、タックインを誘発するような操作をしてしまった際も、経験的にリヤの盛大なスライドを予感して身構えていたのだが、滑り出しの動きがつかみやすく、その分ほんのわずかだがカウンターステアを当てる対処を早く行うことができ、結局最小限の修正舵で対処することができた。しかも、スライドしているときのクルマの動きも穏やかで、スコッとグリップが抜けるようなこともなかった。
また、全体的な操縦性も、リヤのダウンフォースを付け過ぎたら曲がりにくくなるのでは? という考えはまったくの杞憂で、むしろウエット路面を少し攻めた程度のパースだと、4つのタイヤ、とくに前後イン側のタイヤのグリップが上手に引き出されていて、4つのタイヤでコーナーを曲がっていく感覚があった。
初め、実効空力なんて……と少し軽く見ていたのだが、いやむしろこれ積極的に使うべきでしょう! と趣旨替えしました。そのくらい効果は明瞭だった。
改めて空力性能の奥の深さを強く実感した。