この記事をまとめると
■クルマのデザインで語られる「ダックテール」は、ヘアスタイルでも同様の呼び名がある
■クルマの世界ではリヤに装着した三角断面のスポイラーが「ダックテール」と呼ばれる
■最近ではリヤにウイングを搭載するほうがダウンフォースが多く得れるとされて主流になっている
ダックテールとはそもそもどんな物なのか
クルマ好きの間では自動車用語として認識している言葉が、ほかの分野でもメジャーだったということはよくある。今回取り上げるダックテールもそのひとつで、一般的にはヘアスタイルの呼び名のほうがメジャーかもしれない。
ヘアスタイルにおけるダックテールとは、両サイドの髪を後ろに流し、後頭部の中央で合わせるスタイル。日本ではリーゼントのほうが通じそうだが、リーゼントというのは日本固有の呼び名だそうで、海外ではジェームス・ディーンの髪型はダックテールと呼ばれることが多いという。
対する自動車業界でのダックテールは、リヤに装着した三角断面のスポイラーを指すことが多い。代表格として挙げられることが多いのは、ナナサンカレラの愛称で知られる1973年式ポルシェ911カレラRS2.7だろう。
でも、その前からダックテールはあった。1962年デビューのフェラーリ250GTOはそのひとつだ。
250GTOは、当時のフェラーリのスーパースポーツだった250GT SWB(ショート・ホイールベース・ベルリネッタ)をベースとしたレース用ホモロゲーションモデルで、車名の最後のOはイタリア語「オモロガート」の頭文字だ。
3リッターV12エンジンのパワーアップ以上に目立っていたのがスタイリングで、前後フェンダーにアウトレットが追加されるとともに、ノーズは低く尖り、丸みを帯びていたリヤはトランクリッドの先端を跳ね上げていた。
そういえば911カレラRS2.7も、レース用ホモロゲーションモデルだった。両車に共通しているのは、旧き佳き時代の優しい丸みを持ったフォルムにダウンフォースを与えるべく、ダックテールが与えられたということだ。
日本車では1970年にデビューした三菱コルトギャランGTOが、いち早くこれを取り入れていた。当時のアメリカ車に影響を受けたと言われるフォルムは、明確なウェッジシェイプのファストバックをダックテールで締めていた。
後付けのダックテールも多かった。なかでも日産はケンメリのスカイライン2000GT-Rや初代フェアレディZの240ZGなど、オーバーフェンダーとセットで装着しており、高性能の証となっていた。
本格的にダウンフォースを得るには、ウイングタイプのほうが上。それは最新の911GT3が示しているとおりだ。さらに、最近ではエアロパーツに頼らなくても、アンダーボディの形状でダウンフォースを得る技術が発達している。
最近はクルマ好きの間でダックテールという言葉を聞かないのは、これらが理由かもしれない。でも、かつてフェラーリやポルシェなどが、速さを究めるべくこのアイテムを取り込んだのは事実。クラシカルなカスタムパーツとして、もう一度注目されてもいいのではないかと思っている。