気がついたらBMWが「M」だらけ! 増えすぎてわからなくなった「M系」モデルをわかりやすく解説する (2/2ページ)

50年で果てしなく深化したBMW「M」ワールド

 対して「M」は、エンジンの型式認証からして別物だ。エンジンの設計仕様やチューニング具合、トルク&パワーといった出力面から始まって、シャシーセッティングや内外装についても専用仕立てで、公道だけではなくサーキットでBMW Mとして本領を解き放てる動的クオリティが大前提となる。だから、ただエンジンパワーが向上しているだけでなく、サーキット走行することを必要欠かざる要件として加えた、より高規格対応の高次元な仕様という位置づけだ。

 この「M」はBMW M社が手がける系統の中では基本のキ(よくセンタープロダクトなどと呼ばれる)だが、50年の歴史のなかでいまや、+3種類ほど、さらに突き詰めて各自のキャラクターを磨いたMが存在する。

 まず「Mパフォーマンス」は概して、スタンダードMよりもややトップエンド出力を抑えつつ、フロントにマットグレーのアルミパーツをあしらうなど、過激化よりはマイルド化に重きを置いたチューンド仕様。M銘柄の入門としても、またはスポーツ志向のドライバーだがサーキットより公道重視で、実用上の回転域でもフィールに煩いといったタイプに向く。大人仕様のハイパフォーマンスカーだ。

 続いては純「M」を挟んでひとつ上、「Mコンペティション」がある。これはMよりもさらにアウトプット追求型のエンジン・チューンやシャシー制御により、パワフルなパフォーマンスを発揮するタイプ。近年ではM5コンペティションやM2コンペティションが話題をふりまいた。

 さらに、よりサーキット志向を強めて軽量化をも厭わず、快適性をやや犠牲にしてまでもクローズドコースでのハイパフォーマンス、ドライビング上の痛快な切れ味を追求するタイプが、「M CS(クラブスポーツ)」。日本には30台のみが上陸したM3クラブスポーツなどが好例だ。

 エンジン出力はMコンペティションからさらに磨かれ絞り上げられ、10数馬力ほどのトップアップが図られており、足まわりの強化に加えてアクティブMディファレンシャルや、ドリフトを許容するダイナミック・スタビリティ・コントロールなど、よりドライバー・オリエンテッドというかドライバーの走る・操る歓びに特化して躾けられている。

 BMWの各シリーズごとの間口は広い。しかし究めるほどに、ドライビングのスイートスポットが露わになるような、限界を求めて走らせるからこそ経験できる歓喜の質が深化していくところに、BMW Mならではの果てしないワールドが広がっているのだ。


南陽一浩 NANYO KAZUHIRO

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