原因不明だったトヨタのEV「bZ4X」のリコール! ついに解明された「理由」とは? (2/2ページ)

今後は受注している分から順に対応していく

 ちなみに、bZ4Xの動力性能は、最高出力150kW、最大トルク266Nmである。今回のリコールに際し、リース販売(米国では販売)されていたのは前輪駆動(FWD)であった。これに対し、ISでもっとも高出力なのはIS500であり、動力性能は354kW、最大トルクは535Nmであり、最高出力で2倍以上、最大トルクでも2倍、IS500が圧倒的にbZ4Xを上まわる。それでもなぜ、bZ4Xでリコールに至ったのか。

 この問いに対し、トヨタ広報はエンジニアに改めて確認したとして、「動力源のトルクだけでなく、タイヤの直径が大きいことにより駆動力が大きくなるということで、当社の算定では、他車種も含めてbZ4X(のFF車のフロントホイール)が一番大きい」という回答であった。

 ちなみに、bZ4XとIS500の標準装着タイヤ寸法は、bZ4Xが235/60R18で、IS500が265/35R19(駆動力の掛る後輪)である。ここから扁平率を加味して直径を算出すると、bZ4Xが約73.9cm、IS500が約66.8 cmとなる。タイヤ寸法は、タイヤメーカーやタイヤの種類によって若干異なることがあるので、以上は概算だ。ホイール径ではIS500が1インチ大径になるが、タイヤが扁平なので、外周に関わる直径は小さくなる。ハブに掛かるモーメント(回転力)において、直径の小さなIS500のほうが負担は低いことになる。

 ただし、動力性能が圧倒的にIS500のほうが高いのだが、駆動力計算についてトヨタ広報は「当社の算出」によると答えているので、これ以上は考察の判断材料を持たない。

 6月のリコール届出から3カ月以上経っての説明と時間を要したことについて、前田副社長は、原因を確定することにまず時間がかかったと説明した。その手順は、そもそも設計はどうであったか、製品の品質はどうであるかを探り、そして対応について、評価しながらの対処となり、なおかつ量産部品での確認も必要であり、現物を取り寄せ、部品メーカーのデータも見ながら、走り、曲がり、止まるという様々な場面での力の掛り方を想定し、実地確認していくうえで時間が掛らざるをえなかったとしている。

 ホイール品質の改善はもちろんだが、新たに使うワッシャーの手配にも時間がかかったとする。ワッシャーは、ゴムのOリングで止め、繰り返し使用できるという。

 国土交通省へ届け出た車両の台数は、bZ4Xが約2700台で、内訳は、国内が約100台、海外が約2600台であるという。SUBARUソルテラは約1600台で、内訳は、国内が約100台、海外が約1500台とのことだ。

 今後について、説明会当日から生産を再開し、受注している分から順番に対応していくとのことであった。国内販売では、KINTO(キント)の再開は10月26日を予定しているとのことだ。詳細は、bZ4Xのホームページに記載されている。

 トヨタとSUBARUが満を持して市場投入したEVの、5月12日発売から1カ月強で生じたリコール問題は、ようやく目途が立った。クリーンエネルギー車(CEV)への補助金は10月にも締め切られるのではないかというほど消費者の目がEVに集まるなか、ようやく日が差してきたといえる。

 前田副社長は、「トヨタの安心、安全を取り戻したい」と述べた。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

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乗馬、読書
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