モデルチェンジで売れ行き急落! 大人気車はなぜ売れなくなったのか? (2/2ページ)

タントには身内に顧客を奪われた面も

ダイハツ・タント

*先代型(2014年):約2万台
*現行型(2022年):約7000台

 先代タントの販売は好調で、発売された翌年の2014年には、1カ月平均で約2万台を届け出した。N-BOXを上まわり、小型/普通車を含めて、国内販売の総合1位になった。

 ところが現行型は発売当初から伸び悩み、格安の特別仕様車を追加設定したが、発売の翌年となる2020年の届け出台数はN-BOXを下まわった。2021年にはスペーシアにも抜かれた。

 販売低迷の理由は複数ある。まずはタントのフロントマスクなどが大人しく、現行型でシートアレンジを充実させながら、購入の決め手に欠けることだ。タントと同様にスライドドアを備えたムーヴキャンバスの販売が好調で、身内に顧客を奪われた面もある。

 さらにライバル車のN-BOXは、先代型からの豊富な乗り替え需要に恵まれている。スペーシアはSUV風のギアを追加して、堅調な販売が続く。ライバル車の売れ行きが好調なことも、タントの販売を妨げる原因だ。

 そこでタントは先ごろのマイナーチェンジで、スペーシアギアに対抗するようなSUV風のファンクロスを設定した。ただしその一方で、後席の格納方法を変更した。使い方は簡単になったが、格納した荷室の床に段差ができて、荷室高も不足している。売れ行きを盛り返せるかが注目される。

トヨタ・プリウス

*先代型(2014年):約1万5000台
*現行型(2022年):約3000台

 先代型の3代目プリウスは販売が好調だった。発売の翌年になる2010年には、1カ月平均で約2万6000台を登録した。2014年も1万5000台に達していた。

 ところが現行型は、発売の翌年の2016年でも約2万台で、その後の下降も大きい。今は約3000台だ。納期遅延も影響しているが、人気も下がった。

 現行型はもともとフロントマスクが賛否両論で、基本的な機能も、先代型と比べて変化が小さかった。さらに2011年の末にはコンパクトなハイブリッド専用車のアクアも加わって売れ行きを伸ばし、今ではトヨタ車の大半にハイブリッドが用意されている。

 つまりハイブリッドが少数派だった時代には、エコカーの象徴としてプリウスが高い人気を誇ったが、次第に定着していくとプリウスの存在感も薄れた。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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