ビュイックが中国では圧倒的ステータス! アルファードを上まわる大型ミニバン「GL8」とは (2/2ページ)

中国でビュイックが存在感を増していった理由

 中国市場の特徴としては“ファーストペンギン”が重用される傾向がある。中国政府が外資の自動車メーカーを積極的に誘致し、中国メーカーと合弁会社を設立し、中国現地生産を進めていこうとしたときに、真っ先に積極的な姿勢を見せたのがVW(フォルクスワーゲン)であり、以降はサンタナが主要都市のタクシーとして長く使われ続けた。中国政府が自動車に関する規制強化を行おうとしたときはVWにアドバイスを頼んでいといった話も聞いたことがある。モーターショー開催のタイミングでドイツから訪れたVW本社の幹部が上海市長を表敬訪問するといった現地メディアの報道も見たことがある(上海は上海VWがある)。このようにVWはいまもって絶対的なブランドとして君臨することとなった。

 その後香港でアルファード&ヴェルファイアが大ブレイクし、香港の人がビジネスなどで中国本土に自分のアルファードを乗ってくることで、「あのクルマはなんだ」と中国の人の興味を惹いた。しかし、中国国内で正規販売され人気が高まっても、GL8のステイタスにアルファードが及ぶことはなかった(GL8は現地生産車なのに対しアルファードは日本からの完成輸入モデルなので、そもそもガチンコのライバルとはならない)。

 筆者の経験では、空港に到着してタクシー乗り場へ行く途中に“貸切タクシー”のような勧誘を受けたときや、モーターショー会場からの帰りにやむなく白タクを利用しようとしたときも、「GL8だから高いよ」という説明を受けている。市中でアルファードやヴェルファイアの人気が高まろうと、それはまだ“俗世間”的な人気の高さであり、絶対的なステイタスはまだGL8のほうが上と考えている。このビュイックGL8の絶対的なステイタスの高さが中国でのビュイックブランドの高さを支えているのは間違いないといえるだろう。

 少し前だが、新型コロナウイルスが世界的に感染拡大するなか、国際機関が発生源は中国・武漢市かどうか調査にきたというニュースがあった。その時流れたニュース映像には、一団がGL8で移動している様子が映っていた。

 そのビュイックGL8が2022年8月にモデルチェンジを行った。それまではキープコンセプトで世代交代が進み、それほど押しの強くない、古き良きビュイック車の雰囲気を残しながら質感を高めていったが、最新モデルはアルファードに近い押しの強い顔つきを採用している。ただ“艾維亜(アベニール)”、“陸尊”そして“陸上公務船(公務船はビジネスクラスの意味)”という3つのタイプが設定されており、従来からのビジネスユースは陸上公務船が担い、すでに一人っ子政策もなくなっているので、新たにファミリーユース強化として、押しの強いイメージの陸尊シリーズを設定、アベニールはアルファードあたりを欲しがる層を狙いラインアップしたものと考えられる。

 アルファードあたりの客層を狙っているとしても、アルファードとは600万円近い差がある。アルファードというよりは、中国メーカーが最近続々高級商務車(こちらはかなりアルファードを意識してきている)を続々投入してきているので、それを意識して商品力のアップとバリエーションを増やしているものと考えられる。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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