この記事をまとめると
■中谷明彦さんが鈴鹿サーキットで新型ホンダ・シビックタイプRに試乗した
■先導車付きのカルガモ走行でラップタイムは2分30秒台を記録
■新型シビックタイプRはFFアルティメットスポーツとしての完成度を大幅に高めていた
鈴鹿サーキットにて新型シビックタイプR初試乗
新型シビック「タイプR」に、いよいよ試乗する機会がめぐってきた。しかも試乗ステージは鈴鹿サーキットのフルコースである。試乗案内にはヘルメットやレーシングスーツ、グローブなどのアイテムを携行するよう書かれていて、 かなり本格的な走りを堪能させてもらえそうだ。と言うことで、3年ぶりの開催となる鈴鹿F1グランプリ会場となる鈴鹿サーキットへと出かけた。
会場に用意されていたのはタイプR専用色であるグランプリホワイトに彩られた6台の新型シビックタイプRである。3台ずつ2列に並べられ、その前方には イエローの従来型シビックタイプRリミテッドエディションが置かれていた。
どうやらこの従来型シビックタイプRが先導車となり、その後方を3台の新型が追従走行するというリードフォロー形式の試乗会であるようだ。その先導車をドライブするのは伊沢拓也選手と武藤英紀選手。ふたりはスーパーフォーミュラやスーパーGTでホンダのワークスカーを駆って活躍する現役の実力者だ。また、ホンダのテストドライバーで、スーパー耐久に参戦する木立純一氏も名を連ねている。これは相当速いペースで走らせることが期待できそうだ。
早速マシンに乗り込む。新型は先代モデルに比べて全長が35mm長くなった。従来型も新型も5ドアのハッチバックというシビックと同様の車体形式を継承しているのだが、従来モデル以上にセダン的なルックスを備えた伸びやかな全長が新型タイプRをやや大きく感じさせる。グラマラスなリヤフェンダーはドアパネルを専用に形を起こし、またフェンダーアーチも大きく張り出させて全幅を15mm拡幅させている。一方で、スラントしたノーズからなだらかに続くルーフは低く、全高はマイナス30mmとなった。地をはうようなスポーティセダン的ルックスを備えていると言えるのである。
またホイールベースは35mm長くなり、従来車ではリヤのタイヤの接地性に不安が感じられたのだが、そうした部分の改善を期待できる。全幅は15mmの拡幅だがトレッドベースとタイヤのサイズアップの相乗効果でフロントトレッドは+25mm、リヤも+20mmと大幅な拡大が図られているのだ。これによってワイド&ローのプロポーションが強調され、また前後に備える空力パーツも効果的にデザインされていて、高い走りの実力を備えている雰囲気を漂わせる。
歴代モデルで使われてきた赤いセミバケットシートが乗り込んだ瞬間鮮やかに目に映り、またフロアカーペットもレッドで統一。一方でダッシュボードやセンターコンソールは黒に統一され、タイプRの伝統的なカラーコーディネーションが引き継がれている。
すでに暖気が済まされていてエンジンは始動状態だ。ドライバーの眼前にあるメーターはサーキットのレーシング走行にふさわしい表示になっている。これはエコ、ノーマル、スポーツ、インディビデュアルとあるドライブモードのさらに上にある+Rモードを設定すると現れる表示機能で、サーキットは+Rモードで走って欲しいと言うエンジニアリングサイドの意気込みがうかがえるのである。
センターダッシュボードのセンターモニターには前後左右4輪のタイヤ摩擦円にGメーターを組み込ませた新しい表示方法が採用され、タイヤの接地性を視覚的に見せている。ページ画面を左右にスワイプさせてほかのページを開くと、エンジンの油温や水温、ターボチャージャーの過給圧などクルマのコンディションをグラフィックで見せてくれるページもある。さらにページをめくって行くとラップタイム画面表示となり、サーキットでの毎ラップを走りながら知ることができるのだ。
サーキットモードを選ぶと日本全国にある約13カ所の指定されたサーキットであればGPSによるジオフェンス機能で自動的に速度リミッターが解除され、性能を最大限に発揮することができる。また、自身のスマホに専用アプリをダウンロードして自分のスマートフォンで撮影した走行画面をリンクさせてロガーデータとともに表示させたり、クラウド上にアップロードして世界中のタイプRオーナーとそのタイムと走行データを競ったり比較したりすることができるサービスも付加されていると言う。
ドライビングポジションを合わせる。足もとにはしっかりとしたフットレストが備わり、アルミの輝くスリーペダルが印象的でステアリングの正面にしっかりとしたポジションを決めることができた。
シフトはHパターンの6速だが、ショートストロークで操作性に優れ、ゲート感がきっちりとわかりやすくなっている。
さぁ、いよいよ伊沢選手がクルマを走らせ、そのあとに連なってのカルガモ走行が始まる。
F1鈴鹿グランプリ開催準備の関係で今回は西コースのパドックが使用された。パドックは西バックストレートの中程にある。かつてアイルトン・セナがホンダNSXに試乗したときも、この西コースのパドックから走り始め、そのときに立ち会ったことがある。