【試乗】4輪操舵もいい! コンフォート性も高い! 「さすがクラウン」と思わせる新型の走りを徹底リポート (2/2ページ)

直進安定性が高く4輪操舵システムによりよく曲がる

 走り始めると、タイヤが数回転ころがったときに、まず乗り心地の良さが際立っていることがわかる。21インチタイヤを採用したことで、足まわりの硬さを気にして試乗に臨んだが、とくに大きな段差等を通過しない限りにおいては、しなやかな乗り味が確認できた。路面の継ぎ目やパッチなどにおいても多少のハーシュはあるものの、21インチタイヤの常識的な印象からすれば、はるかに快適さが高く保たれているといえる。

 これには標準装着されるミシュランのeプライマシータイヤの完成度が大きく貢献しているはずだ。ころがり抵抗を極力抑え、燃費向上に貢献するというeプライマシータイヤだが、こうした乗り心地面を犠牲にしていないことも重要な評価ポイントといえるだろう。

 走り始めは電動モーターによるEVモードであり、発進時には後輪モーターもアシストしてスムースな発進加速を実現している。速度が上がると後輪モーターはアシストを停止し前輪駆動としての走行に切り替わる。ただ前輪が雨や雪などでスリップしたり、あるいはコーナリングGが感知されると後輪モーターもすぐに駆動力アシストを再開する。車両姿勢安定やトラクションの確保に役立っているのだ。

 高速道路に乗り出すと、ステアリングの直進安定感がものすごく高く、クルマのシャシー剛性の高さやサスペンションのアライメント、ジオメトリー等の正確さなども際立っていることがわかる。直進性の高さは特に高速走行の多い欧州や北米などでも重要視されるポイントで、今回この新型クラウンが北米や中国など欧州も含めて世界中に展開される初めてのクラウンとして、こうした部分に特に神経が注がれているといえそうだ。

 加速シーンではエンジンが始動しダイナミックフォースエンジンがシャープに吹き上がる。その音量は決して大きくなく、ただ回転数が高めに維持される部分は従来のトヨタのハイブリッドシステムの常といえるが、その際のノイジーなサウンドが唯一気になる部分といえなくもない。

 全般的に遮音や室内の静粛性においては、クラウンの利点として引き継がれており、新型においても外界のノイズを遮断しエンジン音が始動したときの音のみが聞こえるといった静かなキャビンが実現されている。

 HVシステムの作動マナーはプリウスなどほかのトヨタ系HVシステムと同じで、モーターの力強さと効率の良いエンジンの始動バランス、さらに回生時の効率の良い制御がドライバビリティを損なうことなく実現されていて運転しやすく扱いやすい。

 最大加速など動力性能的には1.7トンの車重であることを考えても、それほど物足らなさを感じないが、かといって決してパワフルさを売りとしているものでもないことがわかる。非常にジェントルにマナーよく走らせることがこの新型クラウンにとってもっとも燃費にも優れ、乗り心地や快適性を引き出せるドライビングとして受け入れられることだろう。

 さらに、今回走らせて特筆すべき点として挙げられるのは後輪の操舵システムである。これは時速60キロを堺点に低速では逆相に最大4度、高速では同相に後輪を最適角に操舵することで車庫入れやUターン時などの大舵角での取りまわし性の良さを発揮しつつ、高速走行時の旋回安定性なども両立している重要な部分である。アイシン製の4輪操舵システムを採用したことにより、従来のFRクラウンの最小回転半径5.5mに対し、この新型クラウンはFFベースであり、かつ21インチの大径タイヤを装着しつつも最小回転半径を5.4mとより小さくなっている。それは交差点を曲がるとき、あるいはUターン、車庫入れする時などにも扱いやすさを際立たせていて、新型クラウンを特徴付ける重要なアイテムとして、すでに大きな役割を果たしているといえるだろう。

 クロスオーバーといえども最低地上高は145mmと従来のセダンモデルの135mmから10mmほどしか高くなっていない。したがって、悪路を踏破するようなイメージは持たないほうが無難だが、四輪駆動システム制御の完成度が非常に優れていて「雪道など低ミュー路での走行をものすごく得意としている」というエンジニアからの話があった。まもなく冬の時期を迎えるので、雪道シーズンになればぜひその雪道性能を試してみたいと思う。

 また、11月にはよりパワーアップされた2.4リッターのターボチャージャー付エンジンと、トヨタとしてははじめてのシングルモーターに6速トランスミッションを組み合わせたまったく新しいパワートレインを装備するRSが追加発売されるという。 こちらはその動力性能と4輪駆動E-Fourシステムのバランスの良さ、完成度がさらに高いということで、その登場が楽しみだ。

 最後に後席にも試乗してみたが、FFベースとなったことで後席足もとがフラットとなり非常に広い。ホイールベースはFRモデルの先代よりも短くなっているにもかかわらず、足もとスペースが広く感じられるのはFFベースとなっていることが大きく貢献しているといえるだろう。

 Gアドバンスドでは、リヤのシートヒーターやシートリクライニングが備わっていないが、RSではそうした部分の装備も追加されるという。その辺も楽しみにして確認していきたいと思う。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

新着情報