世にも珍しきガルウイングのエンジンフード
ヴァレルンガの生産は1965年に始まるが、この時すでにデ・トマソの内部では、というよりもヴァレルンガで確立されたデ・トマソ、フォード、ギアのコラボレーションによる、さらに大型なスポーツカーの開発計画が進められていた。
それが1966年のトリノショーで発表された「マングスタ」で、シャシーはヴァレルンガから、さらにサイズを拡大したバックボーンフレームが基本。
ミッドにはフォード製の4728cc 4バレルのV型8気筒OHV。10.5の圧縮比から得られた最高出力は305馬力と高性能で、これに5速MTを組み合わせ、わずかに985kgの車重に収められた車体を250km/h以上の最高速にまで到達させた。
ちなみにトリノショーの時点では、搭載エンジンは4778ccのフォード製とされ、ウェーバー・キャブレター付きが418馬力、デカルミ製燃料噴射を組み合わせた仕様では、じつに437馬力と506馬力の最高出力を選択できると紹介され、最高速は300km/hに迫ると紹介されたのだから、マングスタはこのショーでのひとつの華となったことは想像に難くない。
ギアに移籍直後にあったジョルジョット・ジウジアーロによるデザインもまた、マングスタでは高評価を得た部分だった。エンジンカバーがガルウイング方式で開くのは、実際にマングスタのエンジンルームの大きさを見れば自然と理解できようともいうべきものだが、それもまたこのマングスタの大きな個性でもある。
マングスタの生産は後継車のパンテーラが1970年にデビューしたことを受けてこの年に終了するが、生産台数はわずかに400台前後だったとされている。
その性能を考えれば、デ・トマソの残した貴重なスーパーカーともいえるマングスタ。それを実際に見るのはなかなか難しいことだ。