手軽だが本格的! 感動はスーパーGTと変わらない! カート初心者編集部員がもてぎのフルコースカートレース「K-TAI」に参戦してみた (2/2ページ)

無事完走するもアクシデント多発!

 前置きがかなり長くなったが、8月6日は準備や作戦会議がメインとなったいわゆる準備日で、7日が決勝日だ。じつはこのK-TAIに参戦するにあたって、練習日での最低1回の走行が義務付けられているため、我々も7月中旬に1度シッカリと走行し、ある程度の雰囲気は掴んでいる。

 私、井上が乗車するのは「96号車(クラブレーシング・ドゥ)」。スーパーGTのようにクオリファイはないのでグリッド順はクジ引きとなるのだが、そこで強運しか持ってない私が抽選に参加したところ、参加台数101台中なんと101番目のグリッドを獲得! 「これ以上順位が下がらないんだから伸び代しかねぇ!」ってひとりで舞い上がってましたが普通に最悪。チームの皆様、その節は誠に申し訳ございませんでした!

 ただ、これは耐久レース。最初の位置なんかぶっちゃけなんでもいい(はず!?)ので、ここはエンタメ重視ということで……。ちなみに100台を一気に後ろから眺められると意外と好評だったとか!?

 少しマシンごとの体制を解説すると、ボスの石田は「95号車」、スバ女乾は「98号車」からの参戦。95号車は編集長や業界のベテランライターなどがメインで集まった文字どおり「業界ベテランチーム」。筆者の参戦する「96号車」はチーム代表の伊藤さんを筆頭に、20代前後の若手編集者がメインとなって参戦する「若手編集者チーム」。

 98号車は5人中4名が女性というチームで、なんと女子高生までが参戦しているという「女子チーム」。97号車は先述した通りホンダの開発者が関わっているチームで、ここだけ異次元の速さとなっている。いわゆる「本気チーム」。

 各マシンのエンジンは「ホンダGX270」というレギュレーションに沿った汎用エンジンで、排気量は270ccの4ストローク仕様となる。レギュレーションで指定されたエンジンであれば、ホンダ以外も使用可能なほか、EVカートも参加でき、実際に何台かは参加車両がいた。

 ってなわけで8月7日午前9時30分、午後4時30分がチェッカーとなる7時間耐久レースの決勝レースがスタート。今回は筆者の乗る96号車視点で解説します。ちなみに、96号車はスタート前の作戦会議で、「最初のピットインはガソリンの都合と燃費の計算も兼ねて10周ほどで入ろう」という作戦でしたがこれがいきなり大失敗! なんと開始早々にガス欠……。もちろんカートには燃料計も付いていないので、誰が悪いでもないのだが、しいていえば運!? 逆ポールを取った呪いが早くも炸裂したようだ。ガス欠してもマシンを回収してくれて再スタートできるので心配無用なのだが、開始早々にかなり出遅れてしまった。

 ガス欠騒動の後は、とくに異常なくドライバーを変えつつ、ついに筆者の番を迎えた。いよいよ決勝レース本番だ。個人的な目標は、「壊すことなくピットに帰ってくること」「走るからには練習会よりいいタイムを出す」のふたつ。チームからは「上にいた方がいいに越したことはないが、必ずしも上を目指してはいない」と言われていたので、無茶せずに走るのが何よりも大切。耐久レースなので、無理をするより確実にラップを刻む「チリツモ」がキモなのだ。これを続けると、最終的に結構上の方でチェッカーを受けられるんだとか。

 そんなこんなで走り始めたが、練習会で1度走っているおかげもあってか、当日は多くのマシンがいるなかでも冷静に走ることができた。むしろ、あれだけ大きなレーシングコースということもあり、カートサイズではかなり広大なコース幅、周囲のマシンの動きさえ見ていればかなり走りやすいのが正直なところ。ブレーキングポイントも少ないほか、直線が長いので、街のカート場で走るより手の疲労感などは非常に少ないので、極端な話をすると、いつまでも走ってられそうなくらいには体に掛かる負担は少ない。ただし、8月、灼熱だが……。

 我々が使用しているカートは、非常に単純な構成となっており、ミッションもなければブレーキもリヤだけ、サスペンションもない。それ故に、単純だが非常に奥の深い乗り物で、丁寧な操作を心がけ、荷重移動などをしっかりしてやらないと上手く走れないのは、遊び程度で乗ったことがあるカートで身を持って知った過去がある。なので今回は、この広いもてぎのコースを使ってさまざまなことを試したり、速いドライバーのあとを追って真似をしながらさまざまなことが吸収できたりしたのは大きな収穫。クルマ好きの筆者からしたらプラスの要素しかないわけだ。

 それが功をなしてか、「壊すことなくピットに帰ってくること」「走るからには練習会よりいいタイムを出す」という個人的目標のふたつは最初のスティントで無事に達成することに成功。次の順番は数時間後だ。

 その間、給油などは我々ドライバーやメカニックが協力してピットインするたびに行い、まさにチーム一丸となって戦う。こんな体験をしたのはいつぶりだろうか。チャチな言い方になるかもしれないが、学生時代の体育祭がこんな感じだったなぁとしみじみ。

 そして2スティント目がまわってきた。メカトラブルなどもなく、燃料も大量に入っていることから、これから追い上げを狙う目的で筆者に任されたのは「15〜20周」ほど走れという指令。中盤を過ぎたこともあり、今までに溜まったガソリンを使って長いスティントを走り、少しでも順位を上に上げたい作戦とのこと。体力には自信があるのでこの作戦を快諾。

 ちなみに、個体差があまりないカートはドライバーの体格がかなり重要だと聞く。マシンの性能差が少ないと、残りは重量に依存にする領域が大きくなるので、小さくて軽い人は速い傾向にあるのだ。なので、小学生でジュニアカートなどを本格的にやっている人やベテラン女性ドライバーは次元が違う速さを有しており、今回の大会ルールでは、参加者に小学生などが所属するチームにはハンデがつくほど。ちなみに、比較的小柄な筆者は、カートで戦う際は有利と言えば有利。

 そんなこんなで気合いを入れてピットアウト! そのまま快調に3周ほど走っていたところだったのだが、逆ポールを引いた呪いがここでも牙を剥く。なんとチェーンが外れてしまったのだ。もちろん走りながら直せるわけもないのでマシンをコースサイドのランオフエリアに出して回収を待つ。ガードレールの外で待つのがまたなんとも虚しい時間だった。スーパーGTなどのレースで、メカトラブルが発生してしまい泣く泣くマシンを降りるドライバーの気持ちが痛いほどわかる瞬間をまさかここで経験するとは……。回収後、その場で直せれば走っていいとのことだったので、試してみたら”運よく”簡単に直ったので、その場で再スタート。これにより15分ほどロス。これは痛い!

 ただ、「チェーンがすぐはまる=チェーンが緩んでいる or 歯が磨耗している」ということはすぐに予想できた。なので、また同じトラブルが起こる可能性は十分にありえる。そんな不安な気持ちで再スタートを決めたのだが予想は的中。またもや同じ症状が発生し、マシンをコースサイドに止める。ここで筆者が決めたのは「ピットに持ち帰る」だ。チェーンの緩み(もしくは歯の磨耗)はもうどうしょうもないのと、ここで直しても「再発→止める→直す」の繰り返しでは、時間をロスするだけでなく、ほかのドライバーも走れない。完走するためには戻るしかないという判断をしたわけだ。

 その後、ピットにマシンを戻し、凄腕のベテランメカニックたちがあれよあれよと修理を進め、40分ほどで作業完了。やはり各所が痛んでいたようだ。チェーンなどの駆動系パーツは消耗品なのでこればかりが仕方ない。気を取り直して+10周ほど走り、井上の真夏の挑戦はこれにて終幕。

 最後は、チームメイトがチェッカーを受け、我々96号車は無事に完走することができた。K-TAIはルール上、同じ周回数のクルマが複数台がいた場合、全号車が同じ順位となり、次はその下の順位となる仕組み(トップチェッカーのクルマと同一周回の車両が4台いた場合、5台目が2位)なので、我々は31位での完走となった。石田の所属する95号車は24位、乾が所属する98号車は26位、不幸にも多重クラッシュに遭ってしまった97号車は、規定を満たしていたので無事に完走扱いとなり40位。

 各号車、大なり小なりのトラブルがあったものの、大きな怪我などがなかったのは何より。悔しいには違いないが、トラブルもまた、耐久レースの醍醐味なのかもしれない。こういったことはなかなか味わえないのでクルマ好きとしては丸1日「楽しいの詰め合わせ」だった。

 今回参加したチームでは、普段関わることがあまりない業界の人たちや、その他業界から参戦している人など、さまざまな人たちと交流できたのも大きなメリットで、いろいろな話に花が咲いた。社会人になると、こういった大人数で何かをするという機会はそう多くはない。非常に新鮮でどこか懐かしい楽しい夏の思い出となった。

 ハコ車ばかりで走りまわっている井上的には、カートでもてぎのフルコースを走るなんて経験が人生のなかで訪れるとはあまりにも予想外だったが、大変充実した時間であった。来年もWEB CARTOP編集部3名で早くも参戦決定か!?

【クラブレーシング協賛企業】

・株式会社ホンダファイナンス

・関彰商事株式会社

・本田技研工業株式会社

・本田技術研究所

・横浜ゴム株式会社

・ホンダモビリティランド株式会社

・株式会社ホクビー様 →メルティークビーフ

・有限会社ケイズカンパニー                                         

・つきぢ接骨院


WEB CARTOP 井上悠大 INOUE YUTAI

編集者

愛車
ホンダ・シビックタイプR(EK9)/スズキ・ジムニー(JA11)
趣味
写真/ドライブ/サーキット走行/クルマ弄り/スノーボード/ダーツ/自転車/その他多数
好きな有名人
大泉 洋/織田裕二/篠原みなみ

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