この記事をまとめると
■WEB CARTOP編集部・乾がジープ・ラングラーに試乗
■ラングラーが持つという“クセ”の真相に迫る
■フロントガラスの開き方&ドア、ルーフ、ボディパネルの外し方についても解説
ドアとルーフを外して走行してみた!
いつか乗ってみたいと思いつつ、なかなか触れる機会に恵まれないクルマがいくつかある。
今回、そのなかの1台を運転することができた。
ジープ・ラングラーだ。
このクルマが気になっていた理由はふたつある。
ひとつは現行ラングラーの発表会で、デザイナーの方が言っていた言葉が忘れられなかったからだ。
「オフロードではドアを外して走るのが最高なんです」
――ドア、外れちゃうの?
さらに詳しく聞けば、ドアだけでなく、ルーフやボディパネルの脱着も可能とのことだった。
――バラしてみたい……
この欲望の灯火は以降、約4年間、消えることはなかった。
そして、もうひとつ。多くのクルマに乗った経験のある方々が口を揃えて言うのが、「このクルマにはひとクセある」ということ。良いクルマであることも、ゆえに人気であることも間違いないのだが、初めて運転するときは、少し戸惑うだろうとのことだった。
――俄然、気になる
最近のクルマはそれぞれに違った特性があるものの、総じて良くできており、運転しにくいと感じることはほとんどなかった。だからこそラングラーの“クセ”なるものが無性に気になるのだった。
念願叶って、ラングラーとご対面。
思わず「うぉ〜」という声が漏れる。カクカクとしたボディ、筋肉質なオーバーフェンダー、未塗装の樹脂バンパー。ラギッドな雰囲気がたまらない。
ジープ名物“隠れキャラ”を探すことも楽しみにしていたのだが、さっそくホイールに発見。さらにラゲッジを開くと7スロットグリルが現れるなど、遊びゴコロも満載だ。
いよいよラングラーのステアリングを握る。
今回、試乗したグレードは「アンリミテッド サハラ 2.0リッター」。
横長のフロントウインドウに水平基調の内装、トランスファーレバーなど、普通のクルマとはひと味違った景色を弾む気持ちで前へと進める。
市街地では予想外の扱いやすさに肩透かしをくらった。
高いアイポイントや大きなフロントウインドウによって視界が良い。また軽快な走りや切れ角の大きさからか、少々狭い道でも怖さを感じなかった。
しかし難易度が上がるのはこれからだということにも薄々気付いていた。
緊張と期待を胸に、高速に乗る。
待ってました! と言いたくなるほどに気持ちが昂る。まっすぐ走っているだけなのに、ステアリングを握る手がプルプルと動いてしまう。ステアリングセンターが甘いのだ。確かにこれは他のクルマにはない感覚。
よぉし、よし、よし、よし。ムツゴロウさんのような気持ちで野獣ラングラーを手懐けようと試みた。
しかしステアリングがフラフラするだけで、車体がフラついているわけではないことに気づいた。そのため、慣れてしまいさえすればまったく問題ナシ。荒ぶっていたのは私の心だけで、ラングラーはまっすぐ走っていたのだ。
同時にこのステアリングの遊びは本格オフローダーであるがゆえ、悪路で走りやすいようにあえて作られていることも理解できた。
東京・栃木間を往復したのだが、初めこそ衝撃を受けたものの、帰りにはすっかりラングラーの走りが馴染んでいた。
余談だが、愛車(インプレッサWRX STI)のどこが好きか? という質問に、“人見知りなところ”と答えたことがある。方向性は違えど、ラングラーにもそんな良さがあると感じた。乗りこなせるようになることで理解できる魅力がある。その魅力を理解すれば、“クセ”さえも愛おしく感じるのだ。
ここまで“クセ”に着目して記述したが、一般道でも扱いやすく、高速での加速も申し分ない。無骨なデザインや装備が印象的だが、ACCを始めとする安全運転支援システム、前後席のUSB電源が用意されるなど、実用的な面もしっかりとカバーされていた。
ラングラーともすっかり仲良くなった(つもりでいる)私。最後にフロントガラスの開き方&ドア、ルーフ、ボディパネルの外し方を検証してみることに。
まずはフロントガラス。今回はドラレコの配線があったため少し開く程度に留めたが、本来は前方にパタっと倒れてボンネットに固定できるようになっている。
次にルーフ。左右2つに分かれていて、それぞれ外すことができる。私ひとりで軽々持ち上げることができ、「フルーツから出てくる、サザエさん一家みたい」とはカメラマン。
続いてドアは、左右前後すべてが取り外し可能。みんなでドアを運ぶという非日常的な体験に心が躍る。今回は配線の関係で運転席側のみ外した。
最後にリヤのボディパネル。こちらも配線の関係で今回は断念せざるを得なかったのだが、試しに少し持ち上げてみる。このパーツがもっとも大物なのだが、それでも大人3〜4人いれば無理なく外せそうだ。
取説も用意されているうえに、ネジやクリップも扱いやすい。大量のネジを外したら一個ぐらいなくなってしまうのでは……と思ったのだが、ラゲッジに収納スペースまで用意されているから驚きだ。
可能な限りオープンにしたラングラーでいざ疾走!
全身で風を受け、気分は爽快。これはラングラーを手にした人だけが味わえる、至高体験だ。
※公道ではNGのため、クローズドコースにて
本格オフローダーの王様ともいえるラングラー。国内で乗っている限り、その悪路走破性や機能を100%享受するシチュエーションは少ないだろう。だがこのクルマが作り出す世界観と、いざという時のためのポテンシャルには、唯一無二の価値があると感じた。
そしていつの日か、オフロードでラングラーの走りを堪能してみたい。そう願わずにはいられなかった。