いまの日本車にはない盛り上がりを見せた
ひるがえって、日本でこれだけお祭り騒ぎで新型を発表できるモデルがあるのかといえばおおいに悩むことになる。ましてや、今回のマスタングのように夜8時に露店(フードトラック)まで出して、お祭り騒ぎのようなプレスカンファレンスを行うメーカーが日本にあるのかといえば、これもまた悩むことになるだろう。
言い古された言葉かもしれないが、アメリカンピックアップトラックや、マスタングのようなアメリカンマッスルクーペは単なる自動車という工業製品だけでなく、伝統工芸品であり、アメリカ文化のひとつなのである。ショー取材に際し空港での入国審査で「デトロイトに何をしにきた」と聞かれたので、「オートショーを見に来た」というと、係官は「そうか」と納得顔だったので、さらに「新型マスタングがデビューする」と言ったら、ニコニコの笑顔で入国スタンプを押してくれた。
自動車における英国ブランドは、ロールスロイスがBMWグループ、ベントレーがVW(フォルクスワーゲン)グループというように、そのほとんどがイギリス以外の外資グループ傘下となっている。しかし、いまもなお英国車としてのアイデンティティは失っていない。
アメリカ車も日本ではやや根拠に欠けるものの、すでに終焉を迎えているかのような扱いになっているが、V8 OHVエンジンを残すなどアメリカ車らしいモデルのラインアップを続けている。
世界的には日本車の衰退というものが目立ちつつあるが、「長い目でみれば英国車らしい生き残り方を模索すべきだ」と言った人がいたが、それも時すでに遅しといった状況になっているとも語ってくれた。
業界関係者招待日だったからなのかもしれないが、屋内会場のフォードブースに展示されたマスタングを前に筆者のようないい歳をしたオジさん同士で新型マスタングを前に熱く語り合っている姿は日本ではまずお目にかかれないシーンであり、うらやましく見ていた。