欧州の流行を国産車にも上手く融合させるのもデザイナーの腕
●北米向け中型SUVと軽自動車の兄弟関係?
3組目は、トヨタの「FJクルーザー」とスズキの初代「ハスラー」です。FJクルーザーは、北米向けのレトロタイプな中型SUVとしてCALTY(トヨタの北米スタジオ)が提案、2006年に登場しました。「ランドクルーザー40」を現代的に解釈したスタイルは好評で、4年後には日本でも発売になりました。
2014年発売のハスラーは、軽トールワゴンとSUVを組み合わせた企画。メッキを使ったランプまわりや、シルバー塗装のバンパーガーニッシュによるフロントに加え、明るいボディカラーとホワイトのルーフがFJクルーザーとソックリです。そもそもハスラーは「ハマー」との近似性も語られており、まさに「いいとこ取り」のデザインと言えそうです。
●本格ミッドシップになりたかった和製スポーツ
4組目はフェラーリ「テスタロッサ」と三菱の「GTO」です。「512BBi」の後継として1984年に登場したテスタロッサは、1950年代の名前をリバイバルしたフラッグシップモデル。リヤのラジエターを冷却するエアインテークが特徴のスタイルは、もちろんピニンファリーナによるものです。
6年後の1990年に発売されたGTOは「スタリオン」の後継として企画されたもので、コークボトルラインのスタイルはテスタロッサそっくり。「スポーツカーは、ライバルがいるから、面白い」というキャッチコピーもまたフェラーリを想像させますが、ベースはFFセダンの「ディアマンテ」で、当時はダミーのエアインテークが話題でした。
●同じ時期の同じデザイナーによるコンパクトハッチ
最後は、日産の初代「マーチ」とフィアットの初代「ウーノ」です。空白だった1000ccクラスにマーチが登場したのは1982年。もともとは、日産に接触を行ったイタルデザインのジウジアーロに、同社が研究目的で依頼をしたことが発端です。当初から欧州市場を意識したマーチは、極めてプロポーションのよいハッチバックスタイルとなりました。
一方のウーノは、1年遅れの1983年登場。ヒットした「127」の後継としてジウジアーロに依頼した企画ですが、同時期の依頼としてマーチとソックリのスタイルとなったのはある意味自然なことです。ただ、丸く磨かれたマーチに対しシャープな表情を持つウーノと、面の作りに若干の違いがあるところが見所です。
さて、こうして5組を並べてみると、ソックリな理由にもいろいろあることがわかります。「作品」というものは過去の模倣を前提としていますが、必ずしも似ていること自体がすべて否定されるべきではなく、そのクルマをデザインする「意気」こそが大切なのだと思えます。