製造工程の整備次第で一般車への普及もありうる
これまで、カーボンファイバーコンポジットの利点は、軽量高剛性にあり、性能追求が第一であった。その性能がとてつもなく高いことによって、カーボンファイバーコンポジットへの憧れが高まり、高額で高性能なクルマに採用されるようになり、さらにはカーボン風といった見栄えだけを真似る装飾にも使われるようになった。
そもそもカーボンファイバーコンポジットは、軽量化が何より求められる航空機で使われるようになり、次にF1をはじめとしたレーシングカーで採用されるようになった。1980年初頭のマクラーレンF1(MP4)が最初だ。それからすでに40年以上も経つ。
それに対し、フォージドカーボンは、まだ新しい技術領域となる。先駆的なランボルギーニは知見を持つだろうが、ほかはこれからいかに製品に活かせるか、いかに製造工程を整備するかという準備から入ることになるだろう。また、これまでのカーボンファイバーコンポジットのような画一的な見栄えではなくなるので、そこを独創性や個性として位置づける価値観の構築も必要ではないだろうか。
新しい物好きの需要段階から、多くの消費者を惹きつける時代へ、いまは転換点にあるのではないか。
カーボンファイバーコンポジットは、素材へ戻すリサイクルがまだ確立していない。一方で、永く利用できれば、廃棄物を減らす意味での持続可能性を見出せる期待もある。次々に目新しさを求める消費ではなく、よいもの、気に入ったものを、永く使い続けることの幸せを感じられる生き様の浸透とともに、こうした新技術は花開くのではないか。