この記事をまとめると
■カーボンファイバーはレーシングカーやスーパースポーツカーなどに多用されることが多い
■ボディ構成材としては軽くて丈夫だが高価であるため一般車にはなかなか普及しない
■製法も多様化して徐々にコストも下がっているがリサイクル性が確立していないなどの課題が残る
いまはまだレーシングカーやスーパーカーのための高価な素材
F1やスーパーGTといったモータースポーツ専用マシンは、カーボンによってシャシーやボディが作られている。カーボン繊維を樹脂で固めたCFRPは、自動車のボディを構成できる素材としては、とにかく軽くて丈夫なことが特徴。その特性は、加速性能やコーナリング性能といった速さに直結するため、レーシングカーはもちろんのこと、スーパースポーツでも多用されることの多い素材となっている。
1000万円クラスのスーパーカーだけでなく、トヨタGRヤリスのような一般ユーザーにも手の届くクラスでもカーボンルーフが採用されるなど、カーボンという素材は徐々に身近になっている印象もある。
カーボンの製法についても、多様化が進んでいる。
いわゆるドライカーボンと呼ばれるようなプリプレグ(カーボンと樹脂を含浸させたシート)を型に貼り付けて、高圧・高温によって空気を抜き、樹脂を固める製法だけのほかにも量産向けの製法が確立されてきている。
たとえば、前述したGRヤリスのルーフは、SMC(シートモールディングコンパウンド)と呼ばれる炭素繊維複合材料を使っている。SMCは、プレス成形によって数分程度で加工できるという量産性に優れた特性があり、プリウスPHVのバックドアやレクサスLCのインナーパーツに使われていることでも知られている。
軽いということは燃費や電費にも有利であるし、丈夫というのは衝突安全性にも寄与する。レーシングカーだけでなく、市販モデルでもカーボンパーツの採用例は広がっているのだが、全身カーボンというのは、非常に高価なモデルに限られているのも事実。