一般車への普及を目指すならリサイクル性の解決が必要
軽くて丈夫といいことづくめに思える素材なのに、なぜカーボンの普及スピードは上がっていかないのだろうか。
最大の欠点は、修理が難しいという点にある。スチールであれば叩いたり、引っ張ったりして修正することもできるし、変形した部分をカットして新しい部品を溶接して元に戻すといった手法もある。いずれにしても板金修理の幅は広い。
しかし、カーボンはわずかな欠け程度であれば補修可能でエアロパーツのようなサイズ感であれば通常のFRPと変わらない感覚で直せるが、ボディ修正についてはスチールのクルマのように行うことは不可能だ。基本的には接着されている単位でパーツ交換するという手法で直すことになる。
日本のユーザーはそれほど修理費用についてうるさくはないが、海外にはメンテナンスやリペアなどのコストもクルマ選びでは重視されている地域もある。そうしたグローバル市場でのニーズを考えると、仮にカーボン素材のコストが下がったとしても、全身カーボンのクルマがエントリークラスまで広がってくるとは考えづらい。
また、カーボンの課題としてはリサイクル性も挙げられる。
自動車のボディに使われる素材としては、スチールのほかにアルミも増えているが、いずれにしてもリサイクル性は確立されている。しかし、カーボンはそういうわけにはいかない。現状では、基本的にゴミとなってしまうのだ。
もちろん、カーボンパーツに熱を加えて樹脂を飛ばし、カーボン繊維だけを取り出すという技術もあるが、まだまだ確立されているとは言い難い。環境対応としてリサイクル性を考慮することも求められる昨今だけに、この点もカーボン素材の普及に対する足かせとなっているのは否めない。