【試乗】5代目「砂漠のロールスロイス」の走りやいかに? 新型レンジローバーの激速ガソリンモデルに乗った (2/2ページ)

ハイパフォーマンスSUVであることに異論なし

 エンジンを始動させて走らせると、まず4.4リッターV8ツインターボチャージャーエンジンの豊かなトルクが低回転から発生し、力強い発進加速が得られる。車両重量は約2.7トンもあり、非常に重くなっているが、それを問題としない力強い動力性能が魅力的だ。また、アクセルの開度により高回転までパワーを連続的に引き出せるガソリンエンジンターボユニットならではの出力特性も、今後はより貴重さが増すことになるだろう。トランスミッションは8速でクロスレシオの変速ステップ比を持っていて市街地でも走りやすい。

 ただ、大きなトルクゆえ、高負荷時の変速には若干変速ショックを伴っている。タイヤに今回レンジローバー初となる23インチという大径サイズが採用され、またタイヤも285/40R23というスーパーカーのようなスペックだ。ブランドはピレリ社のスコルピオン ゼロが装着されている。これにより高いグリップ性能が発揮され、コーナリング性能は極めて安定して優れている。

 また、2.7トンの車重がありながら車体ロールを極力抑え4輪の接地性を高めた走行姿勢が、これまでのレンジローバーのたくましい走りと同様に引き継がれているといえる。ただ、2.7トンの車両重量が、高速域からのブレーキングに関しては、いささか不安定さを感じさせる。スチール製ディスクブレーキが採用されていて、またアンチノーズダイブジオメトリーが強めに入っているようで、ブレーキング時のノーズダイブを抑える反面、リヤホイールにジャッキアップ現象が起こり踏力に応じた減速Gの高まりが得にくい印象だった。悪路中心に考えれば、このようなハイGでのブレーキングを行うシーンはそうそうないと思うが、高速道路の緊急回避時のブレーキングなどで若干制動距離が伸びることが危惧されるところだ。

 コーナリング場面では4輪操舵が高速域では前後同相になるのでより安定感を増し、一方曲がりくねった低速コーナーでは逆相に変化するので非常に扱いやすい。2mを超える車幅でありながら、大きさを感じさせない扱いやすさがある。一方、逆相から直進状態に操舵が戻る際には若干反応が送れる場面もあり、コーナーの立ち上がりなどでリヤ追従性が不足する場面もあった。車両重量、トルク、そしてタイヤの特性などに合わせたよりきめ細かなチューニングが望まれるところと言えるだろう。

 今回の新型レンジローバーにはロングホイールベースモデルもラインアップされていて、そちらはホイールベースが3195mmとなり、全長も5265mmとなって、今回試乗したモデルよりもホイールベース、全長が200mm長くなっている。またロングホイールベース化により、3列シート配列が可能となり、これまでのレンジローバーにはなかった3列シートの7人乗りもラインアップされることになっている。

 試乗車はガソリンの最上級モデルであり、5人シートで3人がけのセカンドシートが備わっている。後席の装備も極めて豪華で専用のタッチパネルでエアコンやシートポジション、マッサージ機能なども後席独自で行える。もちろん後席もリクライニングするので、ロールスロイスに勝るとも劣らぬ後席居住性と快適性が確保されているのだ。ただ、23インチホイールの弊害もあり、路面に凸凹のある荒れた区間では車体まわりからギシギシといったきしみ音が発生したり、またドライバーはホイールの振れ、ステアリングシミーを感じさせられることもある。こうした部分は従来の4代目は非常に洗練されていたので、今度さらに熟成されていくことを期待するところだ。

 残念ながら新型レンジローバーはすでに多くの受注を抱えていて、文頭で少し触れたように、4.4リッターガソリンモデルは、今後3年分の生産枠がすべて埋まってしまっているという。したがって、しばらくの間受注停止になると言われ、昨今の自動車業界の生産キャパシティ事情が表れている。一方でディーゼルのマイルドハイブリッドモデルなど一部グレードは、試乗会の時点ではまだ受注可能なモデルもあった。購入希望者はなるべく早くディーラーを訪れる必要がありそうだ。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
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海外巡り
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クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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