人が過ごしやすい温度域はクルマにとっても最適
空気は、温度の上昇と共に体積がふくらむ特性があり、これは逆の見方をすると、単位体積当たりの密度が低下することになり、当然ながら空気中に含まれる酸素の量が少なくなることを意味している。たとえば、春秋、人間が過ごしやすいと感じる季節の気温を20度前後とすると、そのときの空気密度はだいたい1.205kg/ m3となるが、これが猛暑といわれる40度になるとだいたい1.128kg/ m3になってしまう。20度の時に対して96.3%の空気密度となり、酸素の量も同率で低下することになる。
あくまで計算上、およその値だが、気温20度で100馬力の性能を持っていたエンジンは、気温が40度になると96.3馬力になってしまうということだ。実際にはもう少し異なる数値だが、気温上昇がもたらすクルマへの影響は、こんなかたちでも現れてくる。夏のサーキットレースでタイムが落ちる理由のひとつは、こうした理由が挙げられる。
では、クルマにとって寒いほうがよいのかという見方だが、これも程度問題である。氷が張る氷点下以下にまで気温が下がると、油脂類が硬化しメカニカルな部分の動きに支障が生じてくる。もちろん、いきなり機能不全を起こすといったことはないが、たとえば冷間始動で走り始めた直後は、車両可動部分の各所が低温によって本来の柔軟性が失われ、スムースな動きが損なわれこともある。
人間が過ごしやすいと感じる20度前後の気温は、じつはクルマにとっても快適な温度域で、所期の性能を発揮しやすいコンディションということができる。