390馬力で最高速305km/hと発表された335S
この315Sの進化型となるのが、「335S」だ。デビューはやはり1957年のミッレミリア。エンジンは4023.32ccにまで拡大され、最高出力は390馬力に向上。シリンダーヘッドとエンジンブロックはアルミ合金製で、潤滑方式もドライサンプに変化している。
シャシーは290Sのそれを基本としたもの。フロントアクスルはコイルスプリングとアンチロールバーを備えたダブルウイッシュボーンに、リヤアクスルは2本のガイドリンクと横向きのリーフスプリングで構成されている。技術的な仕様は、エンジン以外は290S、315Sとほぼ同様と考えてよいだろう。
335Sは、それまでのフェラーリでもっともパワフルで、かつ最速のスポーツカーだった。最高速は305km/hと発表されたが、実際にこのデータを上まわるモデルが登場するのは、約10年後の「330P3」まで待たなければならない。しかし、330P3は、420馬力の最高出力を誇るV型12気筒エンジンを搭載し、かつ335Sに対して150kgも軽いプロトタイプ。335Sがどれほど卓越した速さ、そして運動性能を持ったモデルだったのかは想像に難くない。
335Sは合計で4台が製作されるが、そのうち1台は事故によって消失。残りの3台は現在も当時のコンディションそのままに、リオネル・メッシを含むだろうと想像されるコレクターの手によって大切に保管されている。