デザイナーとエンジニアで衝突も日常茶飯事
●ミリ単位の造形はモデラーが活躍
スケッチが固まるとモデリングが行われます。スケッチがエクステリアデザイナーの仕事であるのに対し、モデリングはモデラーと呼ばれるデザイナーが担当します。多くの場合、まずスケッチから3Dのモデリングを起こし、最終的にはクレイと呼ばれる工業用粘土で実物大のモデルを制作します。
じつは、エクステリアデザイナーもこのモデリングに立ち会うことが少なくありません。スケッチや3Dデータではわからなかったミリ単位の微妙な面の動きなど、モデラーと協力しながら詰めて行く必要があるからです。完成したモデルはデザインの審査会を通して決定されます。
●意外に知られていないCMFデザイナー
さて、エクステリアと同時に進行するのがインテリアとボディカラーの開発です。これを担当するのがいわゆるCMFデザイナーで、C=カラー、M=マテリアル(素材)、F=フィニッシュ(表面の仕上げ)を意味します。
エクステリアとはチームが違うので、コンセプトも別に設けられることが多く、リサーチもまた別々に行われます。たとえばホンダの「ヴェゼル」ではターゲット層を映す色を調査し、トレンチコートのアースカラーから独自のカーキをボディ色として提案しました。
インテリアで使われる金属や木材、革や布などの素材研究もCMFデザイナーの役割です。既存の材料はもとより、新しい素材は織物や塗料メーカーなどと共同で開発を行ったり、新しい木目調パネルについて印刷メーカーと研究を進めることもあります。
こうして見ると、デザインが決定されるまでには長い過程があり、相応の苦労があることがわかります。もちろん、エクステリアにしろインテリアにしろ、中身の機構部分の条件に沿うことが前提ですから、エンジニアとの調整も日常茶飯事で、希に衝突もあると聞きます。
その上で自分が信じる美しさや新しさを実現させるわけですから、並大抵の覚悟ではできない仕事と言えそうです。