走るだけでEVが充電できる道路! 運転席に座る必要のない自動運転車! 技術はあるというけどなかなか実用化されない理由と課題 (2/2ページ)

法律やインフラ整備など一企業ではどうにもならないことも多い

 電気自動車(EV)への充電は、現行の接触式に対し、誘導電流を使った非接触方式がより便利であり、すでに30年近く前から研究開発されている。また、大型トラックなどを含め、長距離移動が日常的な車両に対し、高速道路での非接触による走行中の充電などもホンダなどで研究されている。だが、非接触式は実用化されていない。

 駐車中の充電での非接触については、技術的には出来上がっているといえそうだ。しかし、誘導電流を流す装置を路面に埋めなければならず手間がかかる。それでも、コインパーキングの輪止めを設置している様子を見れば、工事ができないことはないかもしれない。

 一方で、誘導電流を使うことによる電磁波の影響により、近隣の自動ドアが勝手に開閉してしまうなど、周辺環境への悪影響が懸念されている。スマートフォンの普及を含め、通信を使った情報入手など、いまの世の中はさまざまな電波が行き来しているので、そこにEV充電用の電磁波がどう影響を及ぼすのか、しっかり吟味する必要があるだろう。

 高速道路での非接触式充電は、比較的短い距離で十分な電力を供給するため、高電圧の直流電流を非接触で送る社会基盤整備が不可欠だ。たとえばガードレールに沿ってそうした装置を整備するとして、工事代はもちろん、そこで流す電気の確保が必要だ。既存の高速道路の脇に、そうした充電設備を設置できる土地を確保できるかどうか、そこは課題だろう。技術は完成しても、社会基盤整備には土地の確保が不可欠だ。

 また、高電圧の直流を流すための電力設備も数多く必要になるのではないか。その電力をどう安定的に管理するのか。運用上の課題も解決しなければならない。

 既存の急速充電器も10年をひとつの目安に交換作業が行われている。非接触の高電圧の直流電流を流す設備の保守管理に、どれくらいの経費を見込むのか。事業化するには、そうした採算も見込まなければならない。

 いずれの技術も、開発という視点においては不可能ではないかもしれない。技術は、人の力で進化するものだ。ただ、社会基盤として整備できるのか、地域による交通事情の違いにどう対処するのか、そういう事業家の視点が、実用化には必要かもしれない。


御堀直嗣 MIHORI NAOTSUGU

フリーランスライター

愛車
日産サクラ
趣味
乗馬、読書
好きな有名人
池波正太郎、山本周五郎、柳家小三治

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