電気や水素などへのエネルギー転換も容易ではない
乗用車と同様に、電動化によって大型商用車を環境適合させようとの動きがある。米国のテスラにみられるように、トラクターヘッドを電気自動車(EV)化する動きがある。欧州では、鉄道のように架線を使ってEVを走らせる検討も行われている。あるいは、トヨタが取り組むように燃料電池車(FCV)化の構想もある。
だが、あるトラックメーカーの技術者によれば、EVのリチウムイオンバッテリーも、FCVの燃料電池スタックも、大型トラックのように荷物を満載し全負荷での運転が続く状況では、既存のディーゼルエンジンほどの耐久性は得にくいとのことだ。
つまり、大型トラック/バスの環境対応では、ディーゼルエンジンも対応は厳しく、かといって電動化も厳しいという、八方塞がりに近い状況に直面している。
東京都市大学や協力企業による水素エンジントラックの出力が、既存のディーゼルエンジンに近づいたとの情報もある。その実用化は4年後の26年を目標としている。しかし、これから耐久性試験に入るとのことで、先行きは確定的でない。
バイオ燃料に切り替えるとしても、既存の軽油の流通量ほどのバイオ燃料を生産するには、耕作地の確保や製造のためのエネルギー消費がまだ明確ではない。水素をエンジンで使うとしても、水の電気分解はエネルギーを膨大に消費する。
そもそも、電気分解の基となる水は、どういう水を使うのか、明確な答えはない。一方で、世界的に数十億人の人が安全な水を使えない状況にあり、世界3位の長さを誇る中国の長江では、干ばつで水不足の課題を抱えている。
気候変動が現実的となった時代に、水を安易に水素製造用に使うことはできるのか? 人々が安心して水を飲める環境を保持することが先決ではないのか?
乗用車は、次世代型の原子力発電を活用し、EVの普及で生き延びられるだろう。電力の需給には、バーチャル・パワー・プラント(VPP)の構想も有用だろう。だが、大型トラック/バスは明確な解決策を見出せないまま、排出ガス偽装という不正への解決策が見つからずにいる。