ぶっちゃけ「ほどほどに」EVを売ってる自動車メーカーがなぜトヨタ超え!? テスラとは何モノなのか改めて考えた (2/2ページ)

自動車メーカーとして見る企業ではない

 それにしても、世界の自動車メーカーのなかでみてもテスラの時価総額は群を抜いている。2021年の生産台数は100万台足らず(日本のメーカーでいうとスバルと同じくらいのイメージ)で、工場を増設した現在でも年間の生産規模は200万台ほどのメーカーが、これだけの評価を受けているのはなぜだろうか。生産能力でいえば、トヨタやフォルクスワーゲン・グループの1000万台規模には遠く及ばないにもかかわらず、だ。

 株式市場における高評価についてテスラ独自のEVテクノロジーや生産技術という見方もあるが、公開されている工場の映像などを見る限り、見たことがないレベルという印象もない。最後の組み立てラインでは、工員がパーツを取り付けいる様子が確認できるほどで、拍子抜けするほど普通の工場という印象も受ける。

 テスラに限らず、自動車メーカーは労災を減らし、人件費削減することに励んでおり、工場のオートメーション化というのは世界的なトレンドであって、ギガファクトリーとネーミングされたテスラの生産工場に用いられる技術が、株価をここまで引き上げるほどのアドバンテージがあるとは思えない。

 むしろ、株式市場において評価されているのはイーロン・マスク氏のカリスマ性といえるだろう。エキセントリックな発言も目立つ同氏についての評価はわかれるところだろうが未来へのビジョンを提示する発信力は、自動車というカテゴリーに限らず、世界中のあらゆるす経営者の中で見てもダントツといえる。

 その意味では、テスラは単にEV専業の自動車メーカーではなく、新しい“何か”を生み出すという期待を抱かせる企業といえる。自動車業界だけの比較で、生産規模と時価総額の乖離からバブル的に株価が上がっていると捉えるのは間違いである。

 結論として、テスラについては、自動車メーカーと捉えるべきではない。

 かつてパソコンを主力商品としていたアップルが、いまやスマートフォンのブランドになったように、EVにとどまらないと期待されていることが、テスラの株価を高めているといえるし、ビジョンの提示が企業価値の源泉となっていると考えるべきだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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