この記事をまとめると
■インドネシア国際オートショー2022を現地からレポート
■今回は大型SUVに焦点を当てた
■韓国のヒョンデが日本車の牙城を狙っていることを実感した
ヒョンデが日本メーカーに挑んできた!
GIIAS2022(ガイキンド・インドネシア国際オートショー2022)において、日産はインドネシア市場での日産テラの再発売を発表した。テラは新興国を中心に海外で販売しているピックアップトラック“ナバラ”をベースにした、ラダーフレームを有するSUV。全長が5メートル近くになり、ディーゼルエンジンを搭載している。
日産のほかに、トヨタはハイラックスをベースとした“フォーチュナー”を、三菱はトライトンをベースにした“パジェロスポーツ”をラインアップしており、インドネシアだけでなくASEAN諸国では人気が高くニーズの多いクラスとなっている。
ジャカルタのような大都市をメインに乗るならばそれほど心配はないが、やはり地方部ではラダーフレームを有する堅ろうなモデルの需要はまだまだ実用面でも多い。以前タイで日系メーカーの関係者から、「いまどきはラダーフレームにこだわる人は目立たなくなった」という話を聞いたが、それは単にテラやフォーチュナー、パジェロスポーツがタフなクルマというだけで人気があるというわけではないのである。
タイでトライトンを運転する機会があったのだが、その乗り味は“ゴツンゴツン”という表現が似合うような一般的なトラックのイメージではなく、限界に挑戦したような滑らかソフトな乗り味にこだわっていたことに驚いたのをいまも覚えている(ダブルキャブの需要も多く、貨客兼用で乗用車的に使われることも多いからとのこと)。そのようなピックアップトラックをベースとし、インテリアはハリアー顔負けともいった質感の高いものとなっているので、大型SUVは富裕層のステイタスカーとしてのニーズも多いのである。
かねがね、このクラスは、アメリカンブランドも得意としており、フォードなどは力を入れているのだが、日本車の存在が目立っていた。
ただ今回久しぶりにジャカルタを訪れてみると風景が少し変わっていることに気がついた。韓国ヒョンデの同クラスSUVとなる“パリセード”を結構な頻度で目にすることであった。パリセードは2018年にそれまでのマックスクルーズの後継としてデビュー。2022年4月には改良新型が登場している。インドネシアには2021年より出荷されている。ボディサイズやキャラクターは、テラやフォーチュナー、パジェロスポーツと同クラスになるのだが、パリセードはピックアップトラックベースではない。しかも、日本車勢が新興国向けであるのに対し、パリセードは北米市場でも販売されているのが大きな違いとなるだろう。
ヒョンデは日本車が苦手とするBEV(バッテリー電気自動車)のインドネシア現地生産を行っている。さらには、トヨタ・アバンザや三菱エクスパンダーなどが人気車となる、コンパクトサイズの多人数乗車が可能なMPVクラスに“スターゲイザー”を投入。そして、大型SUVクラスにパリセードを投入し、ジャカルタで見ているかぎりは消費者にもまずまず受け入れられている様子。フォーチュナーやパジェロスポーツは確かにステイタスもあるが、街なかでは多く走っている。ジャカルタあたりの消費社会の進んだエリアでの、“他人と違うものが欲しい”というニーズが生まれてきたタイミングを見計らってまさに市場投入してきたような印象を受けた。
ヒョンデは社長が若返っており、それから数年経って新社長の動きのある戦略が世界各地で目立ってきている。日本市場へのBEVとFCEV(燃料電池車)での乗用車販売再開も、新社長の戦略のひとつとされている。そして、“日本車の楽園”であるインドネシアでも日本車への“正面勝負”を挑んできているようにも見えるのも新しい動き。コロナ禍で日本政府や日本企業が“鎖国”に入るなど、動きが鈍くなったタイミングを見逃さずに攻めてきたような感じも受けてしまうが、それは“ビジネスの常道”と考え、異論をはさむつもりはない。