発電専用なのに超ハイテクな可変圧縮ターボを採用! 新型エクストレイルのエンジンの秘密

この記事をまとめると

■日産から新型エクストレイルが発売された

■クランクとコンロッドの間にリンケージを設けて可変圧縮比としたVCターボエンジンを搭載

■VCターボは車両の走行状態に応じた発電量を供給するのに適したエンジンとなっている

可変圧縮比エンジンってなんだ?

 7月25日に発売された4代目となる日産エクストレイルは、ガソリンエンジンを動力源とする方式が廃止され、全モデル「e-POWER」方式によるハイブリッド車として登場した。

 目を引くのは、発電用として搭載されたKR15DDT型エンジン(直列3気筒1497cc、144馬力/25.5kg-m)が、VC(Valuable Compression=可変圧縮比)ターボ方式を採用した点にある。このエンジンは、クランクシャフトとコンロッドの間にリンケージを設け、ピストンストロークの範囲を変化させることで可変圧縮比を可能にしたエンジンだ。圧縮比の変化幅は8:1〜14:1。この圧縮比幅を見れば、ミラーサイクル運転からターボ過給による運転までを意識したものではないか、と受け取ることができる。

 さて、エンジンの役割は、モーターに供給する動力電源の発電だが、可変圧縮比エンジン+ターボの組み合わせがなぜ必要だったのか、というのが大きな疑問点である。というより、この部分が新型日産トレイルの技術的なセールスポイントと言い換えてもよい。

 当面、e-POWER方式による4WD車の発売を先行させているが、現状、日産が採用するシリーズハイブリッド方式の車両に要求される内燃機関の特性は、高効率(低公害性)、高出力性(高発電力)で、緩加速から巡航域まで、モーターが必要とする電力の供給(発電)を効率よく行うことに問題は終始する。

 エンジンを発電機と見なした場合、熱効率に優れたミラーサイクル運転に固定する方法もあったかと思うが、大電力を供給する場合、ターボ過給(=低過給圧設定)が有利なことは言うまでもなく、日産側の説明では、静粛性確保のためターボ過給を採用したとのことだが、これは機関回転数を高くとらなくても発電量が稼げることに着目した結果のようだ。静粛性に関しては、車体側も高剛性ボディと遮音構造の採用で良化を意図している。

 車両の走行状態(モーター稼働状態)に応じてエンジンは電力の供給(発電)を行うが、その際、必要な電力量を供給するのにもっとも適したエンジンの運転状態を作り出すため、可変圧縮比方式が考え出され、その際、必要になるデバイスとしてターボチャージャーが採用されたと考えてよさそうだ。

 将来的にはEVへの移行が予測される自動車だが、現状もっとも現実的な方式はハイブリッド方式であり、日産はEVに寄ったシリーズハイブリッド方式を採用。その際、使用するガソリンエンジンの最大効率化、低公害化を重視した。VCターボ方式の採用は、よりEVに近い走行感覚(静粛性)を確保し、当面続くハイブリッド戦線のトップランナーを目指したメカニズムと言ってよさそうだ。


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