何十年も先が途絶えたままの道は何もの? 首都高の「イカの耳」はなぜ存在するのか

この記事をまとめると

■高速道路に作りかけの分岐部分、「イカの耳」が見られることがある

■首都高5号線の飯田橋付近などが挙げられる

■「イカの耳」が存在する理由は道路の建設中止など

幻と化した内環状線が生んだ「イカの耳」

 首都高に「イカの耳」があると聞いて、あれね、と思った方はかなりの道路オタク。首都高に限らず、全国の道路や鉄道にあるものだ。イカの耳とはなにかというと、作りかけの分岐部分。本線は開通していて、そこから左右に枝分かれしている状態がイカの胴体 (本線)と、そこから生えている耳 (分岐)に見えるから。そのため、道路に限らず、鉄道でも存在するわけだ。

 ポイントは分岐の部分が耳のような形になっていることで、先へとつながっていないということ。事情はさまざまで計画が変更になって、そのままということが多い。道路や鉄道でイカの耳と言った場合、歴史的な意味合いや無駄遣い的な意味も含まれるのはこのためだ。

 気にしているとけっこうあちこちにあって、それほど珍しいものではないが、都心にも存在している。都市高速としてビルの間を縫うように走っている首都高にもイカの耳があるのかと思うが、なかでも有名なのが飯田橋のもの。5号線にあって、トヨタの東京本社前の部分。耳部分も長くて、見ごたえは十分。歴史もかなり長いイカの耳となる。

 しかし、都心のどこからどこへと分岐してつなげるつもりだったのかというと、そもそも内環状線という幻の路線があって、現在の中央環状線のひと回り外側を走る予定だったのものの、すべての計画は中止状態に。飯田橋部分については少しだけ建設が着手されていて、イカの耳が遺構となっている。

 名残りはイカの耳だけでない。この部分は神田川の上を通っていて、橋脚部分には5号線とは別の道路を通すための台座が付けられていたりする。この内環状線の遺構としては7号線、小松川付近にもイカの耳はあって、この部分で飯田橋からの路線を接続する予定だった。

 じつは内環状線の計画は現在も生きていて、未着工となっているというのが正確なところ。今さら土地の高い都内を縫うように新路線を建設するのは至難の技なので、頓挫と言っていいのだが、役所の計画上は中央環状線や外環を先に作っただけで、建設を再開する可能性はなくはない状態だ。そもそも昭和30年代の計画だけに現実味はまったくないし、必要もないだけに、新たに着工することはないだろう。


近藤暁史 KONDO AKIHUMI

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