この記事をまとめると
■自動車保険には「自賠責保険」と「任意保険」がある
■2021年3月時点での任意保険の加入率は約75%
■任意保険に加入するメリットについて解説する
人身事故は自賠責保険から支払われるが……
ご存じのように自動車保険には、加入が義務付けられている自賠責保険と、ユーザーが自分で加入を判断できる、いわゆる「任意保険」がある。
自賠責保険は新車登録時や車検更新時などに加入するため、ほぼ100%の加入率となっているはずだが、一方で任意保険の加入率はどれほどなのだろうか。損害保険料率算出機構によると2021年3月時点での任意保険の加入率は約75%となっている。
任意保険の内容はさまざまあるが、大きくわけると対人賠償保険・対物賠償保険・搭乗者傷害保険・車両保険・人身傷害保険となる。前述の調査結果によると、それぞれの加入率は次のようになっている。
対人賠償保険:75.1%
対物賠償保険:75.3%
搭乗者傷害保険:25.4%
車両保険:46.2%
人身傷害保険:70.6%
微妙に対人賠償より対物賠償のほうが多くなっているのも気になるが、全体の数字をみると対人賠償保険には加入せずともよいと判断するユーザーが4人に1人程度いるということがわかる。
たしかに自賠責保険というのは、交通事故による被害者救済が目的の保険であり、基本的には死傷者への賠償というのは、まず自賠責保険から支払われる。簡単にまとめると自賠責保険から治療費として120万円を上限に支払われ、死亡の場合は上限3000万円、重度障害の場合は上限4000万円の賠償額が設定されている。
任意保険の対人賠償というのは、自賠責保険の上限を超えたぶんについて負担するものだから、自賠責保険で十分に補償できるので任意保険は不要と考えるユーザーがいることは一定の合理性があるといえるだろう。
ただし、死亡事故での賠償額が3000万円を超えるケースというのは珍しくなく、もし任意保険に加入していなかったら、自賠責保険の賠償範囲を超えたぶんというのは加害者側が負担することになる。仮に総額1億円の賠償金が必要だとして、自腹で7000万円を用意しなくてはいけないことになる。そうした事故を絶対に起こさないとはいえないだけに自賠責保険ではカバーできない範囲を考慮して、任意保険に入っておく必要があるのだ。
さらに自賠責保険が賠償の対象としているのは被害者だけであり、物損について自賠責保険は対象外としている。交通事故における賠償責任としては相手の車両の修繕を求められることもあるし、ガードレールや信号機といった道路設備の修復も事故を起こしたドライバーの責任となる。
もし店舗などに突っ込んでしまうと、壊した商品の賠償、店舗の修繕、休業中の補償など非常に高額な賠償が求められることもある。人身事故ばかりに着目しがちだが、賠償するという目線でいうと対人賠償のほうが多額になることも多い。
任意保険では対物賠償の上限額について自分で設定するわけだが、下手に3000万円程度に上限を設定するよりも、上限は無制限にしておくほうが得策だ。