日本で人気だったあのクルマもランクイン!
1975年以降になるとランクインの台数がグッと増えています。レアなところでは1970年代初頭、アメリカの排ガス規制で走れなくなったモーガンプラス8をカリフォルニアの熱心なディーラーがプロパンガスで走るように改造したモデル。こちらは「液化プロパンのタンクがリヤバンパーの上に乗っていて、危険極まりない」と斬り捨て、トライアンフTR7に至っては数々の不具合、仕上げのひどさから「ブリティッシュレイランドの労働者が国の貿易収支を妨害しているかのよう」と述べており、どうやら英国車への思い入れのあるダンらしく、厳しい言及が続きます。
アストンマーチン・ラゴンダ(1976年)は、「鉛筆の箱みたいなデザイン」「機械的には大惨事で、アストンマーチンにとってダンケルク(第二次大戦中、イギリスが敗走した悲劇的な地)にほかならない」「コンピュータによる駆動制御はNASAにだって作れない(ほど難解でダメダメだった)」ためにランクイン。
当然、というべきかフェラーリからもモンディアル8(1980年)が選ばれ「大きくて重い2+2は赤い災害」「矯正歯科医の手が届く安いフェラーリ」とケチョンケチョンですが「最終的にモンディアル8ははるかに良くなった」と気休めのようなフォローも。
また、マセラティ・ビトルボもダンの修辞学が炸裂「ビトルボはイタリア語で『高価なジャンク』を意味します」で始まり、「破産という排水溝を這いずりまわっている絶望的で資金不足の会社の産物」「(ディーラーから送られる)サービスアドバイスを集めたら、グーテンベルクの聖書(ぶ厚いことで有名)並み」で、日本では馴染み薄のクライスラー・ルバロン(このクルマも『たるんだFF4気筒エンジン、敗者専用車』との評価)のバッヂ替えバージョンである「マセラティTC」にも触れ「恥ずかしくないですか?」と酷評中の酷評。膝を叩いて頷く方もいれば、大きく嘆息する方もいらっしゃることでしょう。
とはいえ、これくらいであれば「アメリカ流辛口ジョーク」で聞き流しても良さそうですが、2003年のハマーH2については「911直後に導入されたのは悪い時期」であり「傲慢、巨大、あからさまにアメリカの軍国主義を主張している」また、当時GMがリース事業を展開していた電気自動車「EV1」にとっても、その相反するキャラクターから「PR上の大惨事」としています(結局、GMはEV事業から撤退することに)。こうしたことから、ダンは「H2はGMこそ自動車業界のディック・チェイニー(史上最悪の副大統領として有名)というイメージ作りに貢献した」と結論し、さすがピュリッツァーを受賞する批評家ぶりを見せています。
史上最悪とはオーバーな表現かもしれませんが、しがらみが支配する日本では到底望めないリスト。そういう意味では、ダンの毒舌も、またそれを受け容れる文化まで羨ましく思えてしまうのは、筆者だけではないでしょう。