情報ならネットで十分……はわかるけどそれでいいの? トヨタもボルボも廃止する「紙のカタログ」は本当に不要か (2/2ページ)

写真の解像度では紙のカタログが勝る

 まずインターネットでは、使い勝手に不満が伴う。画面をスクロールしていくと、複数の写真や説明が掲載されているが、特定の情報については、どこかをクリックしないと見落とすことがある。頻繁に閲覧して慣れると問題はないが、メーカーのホームページを常にチェックするユーザーは少ない。その点でカタログなら、最後のページまでめくると、誰でもすべての情報が得られる。

 写真の解像度も違う。インターネットの場合、画面の小さなスマートフォンやタブレット端末で見ることも多い。インパネの写真など、細部のエアコンスイッチなどは分かりにくい。写真を拡大すると画像が粗くなる。

 その点でカタログは、A4サイズで、前述のように上質な紙を使って発色も良い。エアコンの吹き出し口など、細部まで分かりやすい。外観写真の美しさも含めて、インターネットに比べると情報量が豊富かつ上質だ。

 とくに最近はクルマの納期が長い。半年から1年も待たされる車種が増えた。美しいカタログがあれば、それを時々眺めて、納車後のイメージを膨らませられる。メーカーは待たされるユーザーに、美しいカタログをプレゼントして欲しい。

 ちなみに最近は、スマートフォンで撮影した写真をプリントするツールが人気を高めている。「写真という形で残したい」と考えるユーザーが多いからだ。液晶画面の中で見るのではなく、刷られた写真は今でも大切なのだ。

 読者の皆さんにも、かつて所有したクルマのカタログをすべて保管している方がおられると思う。私もその1人だ。そのカタログを見返すと、当時の思い出が溢れ出してくる。柄にもなく、感傷に浸ったりする。カタログが廃止され、PDFによるカタログデータの保存も不可能になると、思い出が遠ざかるのではないか……。

 クルマは、ユーザーの思い出に寄り沿う商品でもある。1人のクルマ好きとして、我々からカタログを取り上げないで欲しいと、切に願う。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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