探してみるとZR-Vにはライバル不在!?
しかし、ZR-V最大の特徴は、ボディサイズではない。そう、セダンから乗り換えても違和感のないセダンライクな運転感覚、インテリアの雰囲気である。
ZR-Vのパッケージ、インテリア担当者によれば「パッケージングの効率の高さはホンダのSUVの特徴ですが、そうした効率よりも、もっとエモーショナルな部分を突きつめていきました。インテリアについてはセダンライクな運転姿勢が特徴です。従来のSUVはやや背中が立っている乗車姿勢でしたが、ZR-Vはセダンがそのまま高くなったような運転姿勢のスタイルに。インテリアにも、SUVよりセダンやクーペに近いパーソナルな空間が求められ、特徴的なハイデッキのセンターコンソールは、人体でいう正中線の役割を意識したもの。シンメトリーな形にすることで、運転席・助手席それぞれの動線が交わらないため、クーペやセダンのようなパーソナルな使い勝手を実現することができました。コンソールやドアには、脚のバタつきを抑えるニーパッドを採用。カーブ時などに体を安定させるとともに、クルマとの一体感を得られ、走りをより安全に楽しめるデザインとなっています」とのことだ。
たしかに、高級感、上質感溢れるインテリア、その前席は、ボタン式シフターやアームレストが備わる、初代ヴェゼルも採用していたブリッジ式センターコンソール(下部が収納になっていて、USBソケットも用意)が運転席、助手席を分断。ドライバー、助手席のパッセンジャーそれぞれがパーソナルな空間に身を置くことになる。
そして、前席のヒップポジションとインパネやステアリング位置の関係を、セダンからいきなり乗り換えても違和感のないセダンライクなものにしているというわけだ。SUVならSUVらしい運転感覚、立ち気味の着座姿勢を期待してしまう(いい意味で)……という人だと「違うだろ」という意見も出そうだが、アイポイントはSUVらしく高めにセットされているため、その点ではセダンではなくSUV寄りにセットされているから問題はないはずだ。
さて、そんなホンダの新型SUV、ZR-Vの国産SUVのライバルにはどんなクルマがあるのか? 全長4580×全幅1800mmのボディサイズは、じつはあるようで少ない。
もっとも近いのがトヨタのRAV4。HVとガソリン車を揃え、全長4610×1865mm。ただし、現行RAV4はそれまでのクロスオーバーモデルから一転、クロスカントリーモデルへと舵を切ったキャラクターであり(とくにガソリンのアドベンチャーグレード)、ZR-Vとはキャラクターが異なる。
実際、ZR-Vの開発陣によれば、「ZR-Vはゴリゴリのオフロード走行をするためだけのクルマではなく、街なかで堅牢さや屈強さを誇示するためのクルマでもありません。自分自身をしっかりと表現しながら、美しく意のままに走ること。それこそが、新型SUVに求められた姿なのです。たとえば、これまでセダンに乗っていた人たちにも、違和感なく乗っていただけます。運転時の姿勢は、まさにセダンライクであり、快適な操作性を実現します。さらに車高がある分、視界はより広がり、車両感覚もつかみやすく、運転の楽しさを加速させます」。
つい最近、フィールドジャーニーやスポーツグレードを追加したマツダのCX-5もボディサイズ的には近く、全長4575×全幅1845mmとなる。RAV4よりも都会に似合う(フィールドジャーニーグレード以外!?)流麗なエクステリアデザイン、美しいボディカラー、オンロードでも際立つ走りへのこだわり……という点でもZR-Vに近いかも知れない。
もう1台、国産SUVでZR-Vのライバルになりうるのが三菱エクリプスクロスだ。こちらはガソリン車とPHEVのラインアップだから、ZR-Vのe:HEV(HV)モデル、CX-5のクリーンディーゼルエンジン= SKYACTIV-Dとはパワーユニット的にまったく被らないのだが、ボディは全長4545×全幅1805mmと、ZR-Vにもっとも近いサイズとなる。
そう見ていくと、ZR-VはたしかにヴェゼルとCR-Vの中間的ボディサイズを持つSUVながら、クルマのキャラクター、ボディサイズとパワーユニットの関係では、日本車としてライバルなき存在になりえる1台と言えるかも知れない。日本仕様のHR-V(初代1998年~=Jムーバー)が2005年12月に生産を終えてから約17年。果たして、一大SUVブームの中に投入された、セダンライクな運転姿勢とパーソナルな居住空間を持つ、ジャストサイズなホンダ最新のSUV、ZR-Vが、絶大人気のヴェゼルに続いて日本のユーザーにどう受け入れられるか、楽しみだ。