マルチボードで多彩なラゲッジスペースのアレンジを実現
フロントシートは撥水機能を備え、しかもシートヒーターも備わる。アウトドアユースへのイメージが膨らむ仕様に。助手席はシートバックテーブルにもなり、パソコン作業や事務仕事用のデスクとして機能する。
オーバーヘッドシェルフやフロアコンソールトレーなど、収納点数の多さがとても印象的だったが、そこにプラスしてタフさや耐久性の高さを感じさせるところも見逃せないポイントだ。
唯一、商用車らしさを感じさせるのがリヤシートで、リクライニング機能も省いた「緊急用」として割り切るべき仕様となっている。
その代わり、スペーシアBASEの目玉アイテムと言えるマルチボードを使ったシートアレンジ性は実に秀逸。フルフラット時にはスキマがなく、樹脂製のラゲッジボードなので家のフローリング的な床が実現する。車中泊や長尺物の搭載に便利なうえ、ボード下に165mmもの高さの空間を保つことができるなど、スペーシアBASEならではの使い勝手の良さを誇る。
このマルチボードは内部に金属の骨組みを持つガッチリとした作りで、多彩なアレンジ性が魅力。まさにモバイルオフィスと化し、テレワークから対面での打ち合わせ、移動販売など様々なビジネスシーンへ対応できるよう工夫が凝らされた。広い荷室を生み出すのも簡単で、荷室の床は防汚機能も備わる。ペットとの旅行でも重宝するだろう。
若手設計者6名が30件以上の商用車ユーザーを訪問し、困りごとなどの課題を聞き出して、それを解決するアイディアを練ったというだけのことはあると思った。
走りのほうは、低価格化を考慮してマイルドハイブリッドの設定はないものの、基本的に乗用のスペーシアと同等の操縦性と快適性を備えているという。サスペンションセッティングも同じながら、フロントのハブベアリングは強度をアップ。パワステはタイヤに合わせたチューニングとなっている。
商用車だからと言って遮音/吸音材の類いを省いてはいないので、静粛性も乗用車なみ。むしろ、ユーティリティのために作り込んだフロアのおかげで、結果的に静粛性では乗用車よりも有利に働く面もあるようだ。
運転支援システムをはじめ、ヘッドランプとフォグランプは全車LED、サイドエアバッグも標準装備で安全性への配慮も抜かりなし。燃費はWTCLモードで21.2km/Lで軽商用車ナンバーワンを誇る。
スペーシアBASEの開発をまとめた伊藤二三男さんは、1993年にスズキに入社。2009年より商品企画を担当し、MRワゴンや先代ワゴンR、アルトなどに携わった人で、2017年にチーフエンジニアとなってからは、キャリィ、エブリィ、スーパーキャリィといった商用車を担当。もちろんこれで終わるわけではないが、スペーシアBASEは伊藤さんの長年の軽乗用車/軽バン商品企画の集大成のひとつと言える力作だ。
そんな伊藤さんは「移動先や仕事中、レジャー中に自分のやりたいことができるよう、工夫を凝らしました。荷室とマルチボードについては、ご自分の自由にアレンジしていただく余地を残しましたので、お客様には想像力を掻き立てていただき、さまざまな妄想から独自の使い方をお楽しみください」と語る。
スペーシアBASEを買ったユーザーが、どんな風に自分色に染めるのか楽しみだ。