発売はもはや「事件」だった! メルセデス・ベンツAクラスの波瀾万丈だけど勝ち組人生 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■終売予定となっているAクラスの歴史を振り返る

■一部に欠陥があり「横転ベンツ」とも揶揄されていた

■250万円前後で購入できるメルセデスということもあり大ヒットした

Aクラスはメルセデスの歴史を語る上で欠かせないモデルだった

 数カ月前から始まった、メルセデス・ベンツがA/Bクラスを2025年に廃止するかもしれないという報道に、複雑な思いを抱く人は少なくないだろう。何せAクラスはもっとも身近なメルセデスのエントリークラスとして、25年つまり四半世紀に及ぶ歴史を刻んできたのだから。そのAクラスから派生した「エントリーラグジャリーセグメント」数車種の中から、真っ先に整理されるのが基本のキたるハッチバック、つまりAクラスなのだ……。Aクラスは1997年の初代デビュー当時、鳴り物入りというかメルセデスの秘蔵っ子シリーズ扱いだったので、隔世の感がある。

 それまでのメルセデスといえば、Sクラス、Eクラス、190、次いでCクラスを順に成功させてきた。トップダウンで上位クラスに準じる乗り心地やドライバビリティを、新たに創り出したクラスで民主化していく、そんな流れは東西統一が成ってドイツ国内に経済格差が出現したとき、あるいは中国が市場として大真面目にカウントされ始めたあの時代、必然の流れでもあった。「400万台クラブ」なんてキーワードが経済紙や夕刊紙の紙面で躍り、それぐらいの規模をもたないと自動車メーカーはスケールメリットで置いてきぼりを喰らって、競争力不足で落伍するなどと真剣にいわれていた。よって自動車メーカー同士では合従連衡の時代でもあった。「最善か無か」を当時から掲げていたものの、当時の生産規模は60万台そこそこだった独立メーカーのメルセデスにとって、Aクラスはそれこそ社運を賭けたプロジェクトだったのだ。

 一方でAクラス前史というか、メルセデスのスモールカーへの取り組みは意外なほど長い。1982年には「NAFA」という、全長はたったの2.5mで全幅と全高は同じく1.5m、正面から見たらほぼ立方体のコミューターというデザインスタディを発表。それから11年の時を経た1993年のフランクフルトIAAにて、「ヴィジョンA 93」という横置きFFスモールカーのコンセプトを発表し、翌年にこれは「ストゥディエ-A」とネーミングが変えられた。デザインをまとめたのは当時のチーフデザイナーだったブルーノ・サッコで、外寸はおおよそ全長3.35m×全幅1.7m×全高1.5mと、後の市販モデルに近いプロポーションとなった。

 いずれ80年代から90年代半ばは、ジウジアーロのランチア・ガンマ辺りから始まった「マン・マキシマム/マシーン・ミニマム」思想がシリアスに捉えられていた時期で、ミニバン&モノスペースが欧州メーカーの間で大流行した時期でもあったのだ。しかしAクラスという初の横置きFFのスモールカーだけでなく、ほぼ同時にVクラスという大型の横置きFFのミニバン&モノスペースをも開発して仕込んでいたのが、メルセデス・ベンツの抜け目なさでもあった。


南陽一浩 NANYO KAZUHIRO

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