電動化なんてこのクルマたちの前じゃ通用しない
潔いといえば、GRシリーズもまた「電気じゃ味わえない」エキサイトメントを提供してくれてます。ラリーのホモロゲーションモデルとしてリリースされたヤリスは言うに及ばず、同じく攻めてるベクトルがタップタプに滲み出ているカローラはともに限界性能が高められたシャシーが高い評価を受けています。
でもって、1.6リッターと小排気量ながらターボによって272馬力(ヤリス)とか304馬力(カローラ)を絞り出して、グイグイ走ってくれるわけです。EVによるレースイベントも盛んになりつつありますが、やっぱり過給する音やウェイストゲートが「プシュ!」と開くのを耳にするのは胸アツ。トヨタのスポーツカーを担うGRには、このほか86やスープラといった電動化に抗うマシンがラインアップするなど「悪あがき」のトップランナーといっても過言ではありません。今後も彼らの抵抗運動(笑)はぜひ応援していきたいものです。
GR同様、電動化の流れそっちのけで気勢を吐いているのがシビック・タイプRにほかなりません。宿敵ルノー・メガーヌR.S.とのFFニュルブルクリンク頂上決戦は末代までも語り継がれるエピソード。今度の新型もシックな佇まいに見えて、でっかいリヤウイングやら3本出しマフラーやら、大人げないまでのリアルチューンドマシンに仕上がっています。
もちろん、ハイブリッドとか眠たいパーツは一切なく、2リッターのVTECをターボでグイグイ締め上げて再びFFニュル最速マシンに輝くこと想像に難くありません。おそらくシビックも早晩EV化されるに違いありませんが、タイプRがもたらしてくれるワクワク感だけはどうにか続いてほしいものです。
と、ここまでEV化の波に抗うのは熱血スポーツだけかのようにお伝えしてきましたが、「電気じゃちと困る」モデルはほかにもあります。
速く突っ走るだけでなく、険しい山岳路や砂漠といった道なき道を行くクルマとなると、やっぱりガソリン車。タクラマカンやサハラ、あるいはアルプスにコンセントがあるとは思えませんからね。予備のタンクを背負うことこそできても、予備のバッテリーというのは今の技術ではなかなかの難題。
あるいは、筆者の思い過ごしかもしれませんがアマゾン川の激流を渡るにしても、緻密なコンバータ制御が漏電しないとも限りません。車内にビリビリきちゃって「これが噂の電気ウナギか」などと上手いこと言う場面でもないでしょう。想像するまでもなく、こうした特殊な目的、機能を持ったクルマのEV化はどう進んでいくのか心配でなりません。
もっとも、ご紹介したクルマたちも時代の趨勢には逆らえなくなる日もくることでしょう。それだけに、悪あがきというより内燃機関の「爛熟期」をもっともっと熱く彩っていってほしいと思う今日この頃ではございます。