最近復活の気配があるクルマのデザイン「コーダ・トロンカ」! 「切り株のようなお尻」ってどんなカタチ? (2/2ページ)

復活の気配のある「コーダ・トロンカ」に過度な装飾は必要ない

 クルマとして横から眺めた時、本来ルーフラインから続いてきて、ボディ下端のラインと交差するところまで存在しているはずの尾、この部分が切り落とされているのを目が追ってしまうこと自体がゲシュタルト効果の一種で、不在ゆえに気になる美しさでもある。

 だが、その造形のキモは、一連のアルファロメオSZ系やジュリエッタ、フェラーリ250GT SWやブレッドバン以降のテールエンドに見られるように、切り落とした後にリヤテールを一周する、切り株めいたエッジ処理にあった。それ以前より、ルーフからなだらかなリヤシェイプを描くことで空力とスペース効率を両どりするアイディア自体は、カムテールで実現されていたのだから。

 逆にテールエンドを切り落とさず整流デバイス実装して空力を高めようとしたのが、CDやパナール、アルピーヌのル・マン車両や、ポルシェ917LHに935ロングテールこと通称モビー・ディックという訳だ。

 加えて「in tronco(イン・トロンコ)」という副詞的用法には、「即座に」とか「一気に」とか「殺伐と」といった意味合いがある。山男が仕事現場で、太い声で短い言葉を交わすような、そんな様子を想像されたし。

 かくして切り落とされたテールだというのに、近頃の新車で復活の気があるファストバックボディのテールエンドには、ゴタゴタと凹凸を増やす加飾パーツが、けっこう貼りついている。空力はボディの外にだけエアを流すものではなく、アンダーボディやボディ内部にも採り込むものになったとはいえ、あまりに本末転倒に過ぎるカムテールやコーダ・トロンカは、やはり美しくない。


南陽一浩 NANYO KAZUHIRO

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