この記事をまとめると
■「切り落とされたテールエンド」と解説される「コーダ・トロンカ」というデザイン処理
■本来は「Tronca=切り株」というニュアンスで名付けられていた
■最近の新車に復活の気配があるが、加飾の過ぎた「コーダ・トロンカ」は美しくない
数々の名車に採用された「コーダ・トロンカ」のデザイン処理
クルマのデザイン用語で、時に「コーダ・トロンカ」というカタカナに出くわすことがある。「Coda Tronca」とか「Codatronca」と綴られるイタリア語で、コーザ・ノストラとかと何だか響きが似ていてワクワクしちゃうかもしれないが、もちろん秘密結社とかマフィアとは語源的に何の関係もない。
しばしばコーダ・トロンカとは「スパっと切り落とされたテールエンド」のことと説明される。でも動詞troncare(=断ち落とす)の過去分詞はtrancato(=断ち落とされた)なのだが、コーダ・トロンカート/coda troncatoなどとまわりくどい言い方はしない。むしろtroncaは「切り株」のニュアンスのほうで、用いられていることに注意しよう。
ちなみにcodaとは尻尾のことで、クルマがスピンした時は「testacoda」とか「testa-coda(テスタ・コーダ)」、つまりアタマが尾っぽ側に突っ込んだ状態のこと。単に「スピン」というより、やらかしてしまった雰囲気が伝わってくるだろう。だからハーフスピンに「テスタ・コーダ」などとは言わない。
話をコーダ・トロンカに戻すと、ようは「切り株(のようにザックリ切った)テール」のこと、という話だ。なぜそんな区別が必要かといえば、それ以前からクルマのテールを長くすれば高速走行時の安定性に寄与するが、切り取ってもその効果はほぼ保たれることは知られていた。
この効果を戦前に発見して唱えたシュトゥットガルト工科大の研究者、ヴニバルト・カム博士にちなんで「カムバック」「カムテール」「Kテール」というのは、けっこう沢山存在した。草分けは、1938年にBMWが制作した実験車両の328カム・クーペ、あるいはストリームライナー華やかなりし頃のアメ車、あるいは1950年代のカニンガムC-4RKなど、多々見られる。
ルーフラインが徐々に垂れてきて、ボディ下端のラインに合流する、今日のファストバックに近いリヤエンド処理の原型という訳だ。