この記事をまとめると
■「藤トモ」こと藤島知子が日産の軽EV「サクラ」に試乗
■内装の仕上がり具合は軽自動車の域を超えるほどの完成度になっている
■姉妹車種として三菱からは「eKクロスEV」が設定されている
話題の軽EVにさっそく公道で乗ってみた!
2010年12月に世界初の量産電気自動車としてリーフの発売を開始した日産自動車。すでに11年以上の月日が経過しており、世界でもっとも電気自動車を普及させたメーカーという立ち位置を築き上げた。2020年7月には新型クロスオーバーEVの「アリア」を発表。日産が持てる電動化技術を詰め込んだ先進感満点のアリアの1充電あたりの航続距離(WLTCモード)は最大で610km。電動車の4輪駆動技術「e-4ORCE」とプロパイロット2.0を搭載したフラッグシップEVとして、日産の新しい扉を開くモデルとしての期待感を高めている。
そして、2022年5月。電気自動車の第3弾として登場したのが「日産サクラ」だ。日産としては、軽自動車のカテゴリーに電気自動車を初導入することになったが、副社長の星野朝子氏によれば、「日産サクラは日本の自動車市場の常識を変えるゲームチェンジャーとなり、電気自動車の普及促進に弾みをつける存在になると確信している」とのこと。内燃機関で走るクルマと比べると、高度な生産技術や品質管理が求められるバッテリー、モーターの技術、先進的な機能を積極的に採り入れている電気自動車は高価になりがち。経済性が求められる軽自動車ゆえに、本末転倒になってしまわないかと懸念していた。
ところが、ヴェールを脱いだ日産サクラは良く考え抜かれていた。3つのグレードで構成され、車両価格は233万3100〜294万300円(税込)。電気自動車としては手頃な価格帯で登場した。しかも、購入の際は国からCEV(クリーンエネルギービークル)補助金が55万円。さらに、自治体の支援制度がフォローする。たとえば、東京都に住所を置く場合は45万円の助成金が適用されるため、ふたつの合計で100万円の補助金を受け取れる。つまり、電気自動車が既存の軽自動車並みの金額で手に入るため、クルマとの向き合いかたや充電環境といった条件を満たせば、初めての電気自動車として手が届きやすい。最近のガソリンスタンドが激減している状況をみても、自宅や職場などに充電器を設置できる場合は、むしろエンジン車を所有するよりもメリットが大きい場合もあるだろう。
サクラに搭載されているバッテリー容量は20kWhで、満充電した際の航続可能距離は180km。バッテリーをたくさん積めばもっと余裕をもって向き合えそうな気もするが、そこは敢えて欲張っていない。開発陣によると、登録車を含めた一般ユーザーが1日に走る距離は30km未満が全体の8割。近場を移動することが多い軽自動車に限っていえば、もっと短いケースもあるため、180kmの航続距離で十分フォローできるという。もちろん、遠くに足を伸ばす場合は、途中で普通充電か急速充電器でチャージすることも可能だ。
プラットフォームはエンジン車の「日産デイズ」や「三菱eKワゴン/eKクロス」と共有されており、エンジンとトランスミッション、ガソリンタンクの代わりにバッテリーやモーターを搭載している。日産サクラは三菱自動車の「eKクロスEV」と共同開発された兄弟車といえるが、両社はNMKVと呼ばれる合弁会社でこれまでも軽自動車の企画やマネジメントを行ってきた。今回の2台については、開発は日産が行い、バッテリーや車両の組み立ては三菱が担う。これはデイズとeKワゴン/eKクロスの開発から生産を行う役割分担と同じ流れだという。サクラとeKクロスEVのメカニズムやスペックは基本的に変わらない。しかし、両者はそれぞれのブランドの車種構成やニーズに応じて立ち位置が異なっているようだ。三菱のeKクロスEVは、スタイリングや内装は基本的にはエンジン車のeKクロスとほとんど変えていない。
アウトランダーPHEVやエクリプスクロスと共通するフロントグリルのデザインはeKクロスEVにも踏襲されており、三菱らしい頼もしさを感じさせる。一方で、サクラは日産の電気自動車の第3弾であり、日常生活の“質”を高めてくれる手の届きやすい電気自動車としての役割を担っている。エクステリアは電気自動車のアリアやe-POWERを搭載するノート/ノートオーラと同じデザイン言語を採用。シームレスなフロントグリルに光るVモーション、薄型ヘッドランプはアリアと共通する要素。格子や水引をモチーフとしたデザインは端正で凜とした佇まいを演出し、日本人の私の心にスッと馴染んだ。