実用的な軽自動車の代表格、スズキ・アルトの魅力に迫る (2/2ページ)
軽自動車界の革命車、歴代アルトを振り返る
商用カテゴリーに入る軽乗用車、と斬新な発想の元にデビューした初代アルト。当時、低迷していた軽自動車業界に新たな旋風を巻き起こしました。現行モデルとなる9代目まで、歴代アルトがどのような歴史を経てきたかを振り返りましょう。
初代(1979〜1984年)
軽乗用車のフロンテをベースに荷室スペースを拡大するなど物品税が非課税だった軽ボンネットバンに仕立てた初代アルト。合わせて徹底したコストダウンを行い、当時の軽自動車価格の平均を大きく下回る47万円で発売したことが話題と衝撃を与えました。
デビュー当時は550cc 2ストロークエンジンと4速MTが組み合わされていましたが、その後、2速ATを追加。1981年には550cc 4ストロークエンジンモデルも設定されています。
初代が大ヒットしたことで他社も軽乗用車を軽ボンネットバンに仕立てて発売。軽自動車のスタンダードとなり軽ボンネットバンが大いに売れたため軽商用車に2%の物品税が課せられることになりました。ただ対象となるのが4人乗りだったことで、アルトは非課税となる急遽2シーターモデルを設定し対応しました。
2代目(1984〜1988年)
軽自動車に新たなムーブメントを巻き起こした初代の後を受け1984年にフルモデルチェンジで2代目が登場。デビュー時から全車に4ストロークエンジンを搭載し上級モデルにはディスクブレーキ(フロント)が施されるなど質感と機能の向上が図られています。
初代から女性ユーザーの取り組みに力を入れていましたが2代目も追従。テレビCMで話題となった回転ドライバーズシートやカラードバンパー、カラードフルホイールカバーを装着した女性ユーザー向けの特別仕様車を設定していきました。
またターボエンジンや4WDを追加し、男性ユーザーをターゲットとした“アルトワークス”を1987年に設定するなどラインナップを拡大。アルトワークスは最高出力64psを発揮するエンジンを搭載しフルタイム4WD仕様も用意するなど走りに特化した軽スポーツとして話題を集めました。女性向けかつリーズナブルなモデルだけでなない、新たな価値観をアルトに生み出しだしたのが2代目の特徴でしょう。
3代目(1988〜1994年)
丸みを帯びた2代目のフォルムからエクステリアデザインを一新。直線基調でスタイリッシュなフォルムで身をまとい1988年に3代目は登場しました。
先代に設定したアルトワークスも引き続きラインナップ。アルトワークスにはラリー用ベースモデル“ワークスR”が追加されています。
また1991年にはBピラーから後部に背高キャビンを配した“ハッスル”を追加設定。現在、主流となっているハイトワゴンに似たコンセプトを採用していたのは興味深いですね。
また標準ボディにも両側スライドドア仕様が設定されていたこともトピックスのひとつです。
3代目の販売中に軽自動車規格が変更となり、1990年には前後バンパーを大型化しボディサイズを拡大。エンジンを660ccへ変更し対応しています。また物品税が廃止され消費税が導入されたことにより、減税のメリットが薄れた4ナンバー車だけでなく5ナンバー車もアルトに初めて設定されました。
4代目(1994〜1998年)
規制や税制の変更を受け様々な対応をした3代目からフルモデルチェンジで登場した4代目。エクステリアデザインは先代と比べやや丸みを帯び、オーソドックスなフォルムへ生まれ変わりました。
ちょうどバブル経済が崩壊した時期に登場したためか、両側スライドドア仕様や上級グレードを整理。ただ、人気モデルとなったアルトワークスはラインナップされ、走行性能を向上させています。
他の軽自動車や普通車と同様に景気の悪化からコストダウンを図ったことでユーザーからの評判はイマイチ。マイナーチェンジで外観などを仕立て直しますが、スズキから1993年に初代ワゴンRがデビューし、ユーティリティ性能を重視するユーザーが増えたことから先代ほどの人気を集めるには至りませんでした。
5代目(1998〜2004年)
軽自動車に安全衝突基準を採用するため全長3400mm、全幅1480mmとなった軽自動車規格改正にあわせボディサイズを大きくし登場した5代目アルト。先代同様、コストダウンを念頭にした内外観を備えています。
ワークスも継続して販売されていますが、ラリーベース仕様の“ワークスR”は廃止。ワークスをベースに快適装備を配した特別仕様車などが販売されましたが、2000年のマイナーチェンジでワークス自体が廃止となりました。5代目一番のトピックスがワークスの消滅といえるでしょう。
5代目にはワークスと対極ともいえるリーンバーンエンジンを搭載した“エボターボ”、また訪問介護ヘルパー向けの“訪問介護車”などを設定。新たな時代のベーシック軽を模索したモデルとなりました。
6代目(2004〜2009年)
軽自動車にも最低限の快適装備が求められる時代となったことで、全グレードにエアコン、パワステが装備された6代目。またハイトワゴンが人気を集めていたことで全高や室内高を高め居住空間を拡大しています。
先代に設定されていたリーンバーンエンジンは廃止されK6A型エンジンのみを搭載。グレードも3種類へと整理するなどシンプルな構成になりました。
また一部で熱望されたワークスの復活ですが6代目には設定されませんでした。歴代モデルを振り返るなかで、この6代目はかなり印象が薄いモデルといえます。
7代目(2009〜2014年)
その当時流行っていたキャブフォワードスタイルを取り入れたエクステリアが目を引く7代目アルト。7代目は2009年のグッドデザイン賞を受賞しています。
このモデルではとくに燃費性能が重視され、メーター内に瞬間燃費、平均燃費などを表示するディスプレイを備えたことや、ボディ全体で計量界を図りアイドリングストップシステムなどを装備した低燃費仕様“アルトエコ”を追加しました。
アルトエコを中心に燃費性能の向上をモデル末期まで続け、2013年のマイナーチェンジ時には35.0km/L(JC08モード燃費)を達成しています。
8代目(2014〜2018年)
プラットフォームを全面刷新しとくに走行性能の向上が図られた8代目。燃費性能も軽量化などで実現した先代のエコモデルを超える37.0km/L(JC08モード燃費)を実現しています。
ただ、8代目の大きなトピックスはアルトにスポーツ仕様が設定されたこと。デビューから約3ヶ月後に“ターボRS”、1年後には“ワークス”が追加されました。
この2車は見た目で違いを判別することが難しいのですがワークスはしゃかりきに走りを楽しむスポーツ仕様、ターボRSは標準仕様をベースにエンジン専用チューンやサスペンションの変更などでスポーティに仕立てたモデル。どちらもアルトのスポーツモデルを待ちわびていたファンから多大な支持を集めています。
アルトのグレードとおすすめ
9代目のグレードはエネチャージとマイルドハイブリッドと2つのパワーユニットそれぞれに2タイプを設定。
エントリーグレードとなるのがエネチャージエンジンを搭載する「A」でFFが94万3800円、4WDが107万5800円となります。ただ、「A」は「スズキ・セーフティ・センス」は標準装備となりますがプッシュスタートやフルオートエアコン、運転席シートリフターが装備されてなく、リヤドアガラスが開閉できない埋込式となるなど日常使いには厳しいグレード。いまどきの軽自動車では珍しい100万円を切る車両価格は魅力ですが、購入はおすすめできません。
続くグレードが同じくエネチャージを積む「L」でこちらはFFが99万8800円、4WDが112万9700円。また「L」にはフルオートエアコンやLEDヘッドランプが備わる“アップグレードパッケージ装着車”が用意され、こちらはFFが113万800円、4WDが126万1700円となります。またアップグレード装着車はホワイト2トーンルーフ仕様が選択可能になるなど、9代目のメイングレードとなっているようです。
軽自動車で最も良い燃費性能を誇るマイルドハイブリッドも2グレードを選択可能。「ハイブリッドS」はFFが109万7800円、4WDが122万8700円。さらにLEDヘッドランプ装着車が用意されており、こちらはFFが115万5000円、4WDが128万5900円。
9代目アルトの最上級グレードとなるのが「ハイブリッドX」でFFが125万9500円、4WDが137万9400円。このグレードにはプラス11万2200円で全方位モニター付ディスプレイオーディオが、プラス7万9200円で全方位モニター用カメラを装備することが可能です。
ガソリン車とハイブリッド仕様を両方用意している車種の場合、その価格差は大きいのが一般的ですがアルトはそこまで大きな価格差がありません。
ただし燃費の差もそこまで大きくないため全方位モニター付ディスプレイオーディオを装着したいのであれば「ハイブリッドX」、そうでなければ欲しい装備がまんべんなく備わる「L」のアップグレードパッケージ装着車が筆者のイチオシグレードです。
まとめ
燃費性能、安全装備が充実、かつリーズナブルな価格設定と新世代の軽スタンダードを目指した9代目アルトの実力は相当高いことがわかりました。
後は先代に用意されていたワークスが復活すれば……と期待するファンも多いことでしょう。
9代目に追加されるかどうかは微妙かなと思われますが、アルトの魅力をさらに増すためにもワークスの復活を祈りたいものです。