3列目を取ってしまったモデルが登場する始末
初代が1997年に登場し、2代目が2001年にデビューしたトヨタのカローラスパシオは、当時のカローラベースのコンパクトミニバン。ミニバンブームの真っ盛りの時代で、3列シートモデルを作ればある程度売れる……という目算だったはずだ。
カローラスパシオも7人乗りを実現したわけだが、3列目席は簡易すぎる仕立てで、子供、ペット専用席という着座感。足もとスペースはないに等しかった。当然、普段は格納してラゲッジルームとして活用する前提の3列目席と言えた。
ここまでは、ボディのサイズからして、3列目席の狭さを想像しやすいコンパクトミニバンを紹介してきたが、じつは、見た目ではそこそこ使える3列目席があると思えるのに、実際に座ってみると、期待を裏切る乗りにくさ、狭さを誇る(!?)ミニバンを紹介する。それがホンダ・ジェイド。
オデッセイとストリームの中間を狙ったスタイリッシュかつスポーティなミニバンであり、2列目席はなんとV字にレイアウト、スライドするという特異なパッケージングで成り立つミニバンだった。身長172cmの筆者のドラポジ背後のV字レイアウトのなかなか豪華なシート長480mm×シート幅550mm、シートバック高610mmのセパレートタイプの2列目席に着座すれば、頭上の120mmはともかく、膝まわりスペースは最大300mm(!!)もあり、1列目席下につま先も入るため、ゆったり。
が、シート長440mm×シート幅855mm×シートバック高580mmという3列目席はリヤヒンジ式ドアということもあって乗降はけっこうアクロバティックで、頭上に110mm(リヤガラス部分)、膝まわりに0~80mm(80mmは2列目膝まわりスペース120mm時)はともかくとしても、3列目席の座面が低く、膝を立てる体育会座り姿勢となり、かなり窮屈な着座感となったのも事実。よって、ミニバンとしての商品力はかなり厳しく、売れ行き不振だったのも当然と言えた。
で、2018年5月のマイナーチェンジでついに3列目席を取り払った2列シートのRSが登場し、”ジェイドの本来あるべきスポーティワゴンスタイル”(筆者の個人的印象)が加わったのである。RSは今見てもスタイリッシュで古さなど感じさせないほどで、使いにくい3列目席を取り払ったことで納得できる商品性を発揮していたと思う。
このほかにも、SUV×3列シートの先代アウトランダーの3列目席も乗降性、着座感、居住性ともにかなりビミョーだったし、プリウスのミニバン版のプリウスαの3列目席も、プラスαそのものの極めて緊急席的なシート、居住性だった。
プリウスは残り、2列シートもあった低全高ミニバンとも言えるαが消滅したのは当然の成り行きである。3列目席をしっかり使いたいのであれば、ステップワゴンやノア&ヴォクシー、セレナ、アルファードのようなM/Lクラスのボックス型ミニバンに行き着くことになる。