納期1年のヴォクシーがわずか3カ月で納車だと!? トヨタが販売店を差し置いてもサブスクサービス「KINTO」を超優遇するワケ (2/2ページ)

「KINTO」優遇はトヨタの儲かる仕組みができているから

 この背景にあるのはトヨタの危機感だ。トヨタは国内販売が最盛期を迎えた1990年に、日本国内で約250万台の4輪車を販売したが、2021年はOEMの軽自動車を含めて約148万台だ。1990年の59%に留まる。

 1990年に比べると今は国内の販売総数も減ったが、トヨタの減少も40%以上だから、需要を保つ対策が必要になった。そこで若年層が保険料を抑えられるKINTOに力を入れる。今の加入では、運転免許返納時に解約金が無料になるサービスは廃止されたが、解約金フリープランを選ぶと、申込金は必要だが解約は自由に行える。このプランは若年層だけでなく、運転を近々やめようかと迷っている高齢のユーザーも対象にしたものだ。

 KINTOを利用するときに注意したいのは、あくまでもクルマを貸すサービスになること。買い取りはできず必ず返却するから、チューニングやドレスアップは行えない。自分で車検対応のアルミホイールに履き替えたときも、標準装着されていたホイールに戻して返却する。ペットの同乗も禁止され、走行距離なども含めて、所有権を手に入れる購入に比べると制約が多い。

 また、メーカーは、契約して3〜7年後に、戻ってきた車両をどのように活用するかを考えておく必要がある。KINTOの関係者によると「返却された車両は、改めて中古車として貸し出したり(KINTO ONE中古車も用意されている)、中古車市場に卸す可能性もある」という。KINTOに限らず、カーリースのサブスクでは、貸与期間を終えた車両の有効活用が不可欠だ。

 そこを踏まえると、KINTOの納期が過剰に短いことも納得できる。今の市場環境で納期を短くすれば、KINTOの利用者が増えるだけでなく、リース期間を終えた車両が戻ってくる時期も早まる。今は納期の遅延で新車の販売台数が減っているから、数年後の中古車市場でも流通台数が少ない。そうなれば返却された車両を高値で売却するなど、有効に活用できる。

 このようにKINTOでは、トヨタがしっかりと儲かる仕組みが構築されており、それに他社が追従できるか否かが注目される。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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