豊かな経験に裏付けられた新しい表現
その最新作が冒頭で紹介したアイオニック6です。コンセプトカー「Prophecy」を基本とするボディは「シングルカーブの電動ストリームライナー」を標榜し、リヤに向けてボディが収束する、まさに流線型を極めたスタイルです。
とても5と同じシリーズとは思えないデザインを「カッコ悪い」「何を考えているのか?」と一刀両断するのは簡単ですが、それは少々短絡的かもしれません。
まず、アイオニックシリーズは、BEVとして内燃機関車とは異なる独自のスタイリングを試行していると考えられます。シリーズとしては、5で提示された「パラメトリックピクセル」を共通の表現としつつ、スタイリング自体は固定概念にとらわれない手法を実践するということです。
また、もともと欧州ではこの手のクセのあるスタイリングが稀に見られるという点もあります。たとえば、少し旧いところではエンリコ・フミアによるランチアの初代「イプシロン」や、近年でもメルセデス・ベンツの「CLA」などは同様の尻下がり感がありますし、さらに言えば60年代デザインのオマージュとも考えられます。
つまり、欧州デザインを背景にしたヒョンデのデザイン体制は、こうした自由で幅広い表現を楽しみつつ、新しい挑戦を続けているように見えるのです。これは、ある意味「余裕」と表現できるかもしれません。