この記事をまとめると
■トヨタは発売予定のモデルの外観をあえて見せてその開発動向を明かす戦略を取っている
■TNGAプラットフォームによる一括企画がトヨタの大胆な戦略を可能としている
■TNGAの取り組みの本格化が豊田章男社長のプレゼンテーションにつながっている
EV16台・クラウン4台を一気に先出ししたトヨタ
トヨタは、新型クラウンの発表で、従来にない4車種での展開を明らかにし、その外観の様子を壇上のモデルで示した。同じことを、昨年12月のバッテリーEV戦略に関する説明会でも行い、今後発売予定の16台のEVを壇上に並べてみせた。そのほとんどが、外観の形を見せるだけの模型であったとしても、発売予定の車種を外観から想像することはできるのであり、将来へ向けた明確な開発動向を明らかにすることは、そう容易にできるわけではない。
新車のスクープは、その外観をいかに捕らえるかが肝になる。その外観を見せてしまう大胆さがトヨタにはある。
なぜそこまでの行動がトヨタにはできるのか。
技術的背景となるのは、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の取り組みではないかと思う。
TNGAは、現行プリウスからはじまり、その成果はC-HR、カローラへとつながっていく。車格上の車種では、カムリのモデルチェンジを経て、RAV4やハリアーが生まれている。そして、それぞれの例において、初登場となったプリウスやカムリに比べ、それらを土台に発売された後の車種のほうが、一段と商品性や性能に優れた新車として現れたのである。
TNGAは、基本的な機構や構想は共通としながら、個別の商品性に余分の資源を振り分け、商品力に磨きをかける開発手法である。こうした技術的要素を背景に、トヨタはマツダとの提携によって、マツダがSKYACTIVの取り組みのなかで行ってきた、一括企画の手法を学んだのではないかと思う。
一括企画とは、この先数年以内に発売予定の新車開発について、先々採用予定の新技術を実用化できた段階で織り込み、進化させていくことができるよう、社内で情報共有する手法だ。これによって、先々の商品企画と、技術開発の進行を連携させ、市場へ出したクルマの商品性を常に新鮮に保つことができる。
要素技術開発と新車の発売とその先の進化を連携させるには、長期的な商品企画が練られていなければならない。トヨタは総合自動車メーカーであり、グローバル企業でもあり、世界で販売する将来の新車を、一括企画のような手法で開発しようと取り組んだ結果、クラウンにしてもバッテリーEVにしても、より明確に将来像を世に示すことができたのだろう。
そして繰り返しになるが、TNGAの取り組みが本格化したからこそ、それを実現する技術的裏付けもあり、豊田章男社長の自信に満ちたプレゼンテーションにつながっているのではないか。