技術の進化に合わせて小さくなった物とは
さて、続いてはクルマの進化で小さくなったものを考えてみましょう。ひとつ目はヘッドライトです。
これはユニットそのものの大きさというよりは、中に埋め込まれている光源が進化し、小さくなりました。もっとも長い期間、ヘッドライトとして使用されてきたのは白熱球。昔のクルマに丸いヘッドライトが多いのは、シールドビーム式という大きな白熱球を使用した形状が多かったからです。
低コストなハロゲンランプもいまだ現役。ディスチャージライトやキセノンランプと呼ばれるHIDも、明るさがアップし耐久性にも優れることから、現在も使用されています。そして、ヘッドライトを小さくした立役者ともいえるのが、2007年のレクサスLSで世界初採用された、LEDヘッドライトです。1個だけでは光量が低いため、複数で構成されることになりますが、それでもコンパクトに設置でき、フロントマスクのデザインの自由度が上がるという嬉しいメリットもあります。また、2015年あたりから登場したレーザーライトになると、さらにコンパクトな設計で遠くまで照射が可能となるため、ヘッドライトは一気に未来的なデザインになっています。
小さくなったものふたつ目は、シフトレバー。
これは正確には、小さかった頃から一度大きくなり、再び小さく多様になったものといえます。というのは、まだMT車が主流だった1970年代には、細長い棒の先に丸いシフトノブがついているだけのようなシフトレバーが多かったんですね。それがAT車が増えていくにつれて、太く立派に。
MT車の場合にはブーツというカバーで覆われていて見えなかった、シフトゲートと呼ばれるガイド溝も見えるようになって、ストレートタイプやジグザグのゲート式などが登場しました。そこから革新的な小ささとなったのは、2003年に登場した2代目トヨタ・プリウスのエレクトロシフトマチックと呼ばれるものや、2010年に登場した日産リーフのセレクトレバーなど、ツマミを動かすように操作する電制シフト。
2007年に登場したジャガー・XFではダイヤル式シフトや、ホンダのアコードやインサイトなどで採用され、最近では新型ステップワゴンのハイブリッドにも採用されたボタン式のシフトなど、近年はレバーではないタイプのシフトも登場しています。ただ、ユーザーからの評価にはそれぞれ一長一短あるようで、今後どんなシフトに進化していくのかが楽しみです。
小さくなったものの3つ目は、燃料タンク容量です。
これはやはり、クルマの燃費の進化によるものが大きいといえるでしょう。燃費の表記は、2011年に10・15モードからJC08モードに変わり、さらに2018年からWLTCモードが採用されているので、正確な比較をするのは難しいのですが、現在もJC08モード燃費表記のあるスズキ・アルトを例にしてみると、2010年のアルトはATモデルでJC08モード燃費が21.8km/L。ガソリンタンク容量は30リットルありました。2021年末にフルモデルチェンジし、マイルドハイブリッドとなった現行型のアルトは、JC08モード燃費が33.1km/Lに(WLTCモードは27.7km/L)。
とんでもない進化となっており、それに伴ってタンク容量は27リットルに減っています。
軽自動車はとくに、ボディサイズの制限があるため、少しでも無駄なスペースを削って室内スペースや荷室、安全装備などの他のスペースに充てたいということや、ほかのカテゴリーに比べて遠出をする人が少ないという事情もあり、タンク容量が小さくなっていることが考えられます。また、ガソリン車のみだった初代ホンダ・フィットはタンク容量が42リットルでしたが、ハイブリッドのe:HEVがメインとなった現行型では、40リットルと小さくなっており、電動化によって小さくなっている車種も増えています。
ということで、日進月歩で進化を遂げているクルマには、その進化によって大きくなったものと、逆に小さくなったものがあることがわかりますね。今後も、一部の車種ですでに採用されているように、デジタル化されてサイドミラーが小さくなるどころか無くなってしまうなど、驚きの変化も予想されるので、注目していきたいところです。