販売実績とネームバリューの乖離というジレンマ 主にブランディング的な視点でいえば、中身が変わろうとも長寿モデル名を残すことには意味があるといえる。
また長寿モデルというのは、なまじネームバリューが大きいだけに生産終了をしたときのネガティブイメージが実際よりも大きくなりがちという面も無視できないだろう。
利益の少ないであろう車種を整理することは経営的にはプラスのはずだが、もし「トヨタがクラウンを廃止」などという報道が出れば、一般には「トヨタはクラウンを維持できないくらい経営的に追い込まれている」といったイメージを持たれるだろう。
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それは日産においても同様だ。スカイライン という貴重なブランド価値を守ることができないと市場に思われることは企業イメージを毀損してしまうことにつながるだろう。認知度が高いモデルの取り扱いというのは非常に難しいのだ。
車名のネームバリュー(ブランド価値)が高いほど、合理的な経営判断が世間に理解されない可能性が高い。それが株価の下落につながることはないだろうが、B to Cビジネス(一般消費者を対象のビジネス)である限り、ブランドイメージが悪化するのは得策ではない。そしてブランド価値が大きく下がれば、結果として株価にも悪影響を及ぼしてしまうかもしれない。株価は企業価値とイコールであり、株価が下がることは経営の失敗といえる。
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自動車メーカーに限らず、良くも悪くも企業価値に影響を与えるであろうロングセラー商品の取り扱いというのは、ブランディング・経営戦略の両面から難問といえる。
ただし、伝統ある名前のモデルを、ただ維持するだけでは、問題の先送りに過ぎない。トヨタはクラウンで、グローバルなトヨタのフラッグシップ・シリーズとしてファミリー化するという攻めの判断を見せた。はたして、日産 はスカイラインという価値ある名前をどのように活用するのだろうか。