深刻な納期遅延でこれまでのセールス手法が通用しない! 新車販売現場はいま「昭和感」のある売り方が大切だった (2/2ページ)

いま状況と顧客の特性に適したクルマの売り方とは?

 しかし、あるベテランセールスマンに聞くと、「新人だけでなく中堅あたりでも、たとえば初回車検前のクルマに乗っている得意客へ新車の乗り換えを勧めるようなことを、“無茶ぶり”として遠慮するセールスマンが多い」と話してくれた。

 消費者も買い物をする時には余計なコミュニケーションを不要と考えるようになってきた(オンラインで多くの買い物を済ませる人も目立っている)ので時代の流れとともに販売手法も変わってきたともいえるのだが、それでも“このセールスマンから買いたい”という新車購入を好む消費者が絶滅したわけでもない。いまのような非常時ではどこまで“顔で売る”ことができるお客を囲っているかでセールスマンの命運が分かれているといってもいいだろう。

 自分たち(セールスマン)の売りたいクルマ(グレードやボディカラー、装着オプションも含む)を自然体に勧め、お客自身が納得した上で購入してもらえるかどうかが、新車販売のプロたるセールスマンの腕の見せどころ(結果的に売りたい新車を買ってもらえそうにないなと判断すれば、お客の希望する新車を販売する柔軟性も兼ね備える)。そこで大切なのが、セールスマン自らが“新車販売のプロ”という驕りを見せないこと。プライドを持つことは大切だが、「私ならこのアクセサリーを装着します」とか、「実際私も装着していますよ」などと、“オレオレ”と自己主張すれば、そのお客と十分なコミュニケーションがとれていなければ、お客のほとんどはドン引きするだろう。

  

 セールスマンは新車販売において、そしてその後のアフターメンテナンスでもお客に気持ちよく新車を購入してもらい、使ってもらえるように黒子に徹するのが本流と考える。“新車販売のプロが目利きするから間違いない”という驕りは新車販売にはいらない。それにいまどきなら、「あなたが勧めるから装着したけどいらなかった」とトラブルを誘発する危険性もある。お客に「どんなオプションがお勧めなの」と聞かれても、「お客様の多くは……」と自分の経験則に基づいた説明に終始し、あくまで主役であるお客に判断してもらう。そして、お客は自己判断で選んだという満足感がありながら、セールスマンが売りたい新車に結局決まっていたというのがベストな新車販売の流れであり、無茶ぶりを無茶ぶりとは見せない売り方こそ(実際このように売れば結果的にある程度“無茶ぶり”であってもクレームにはなりにくい)プロたるセールスマンの腕の見せどころともいっていいだろう(つまり商談では一貫してお客を“立てる”売り方をすること)。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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