この記事をまとめると
■筆者は2022年のバンコクモーターショーに足を運んだ
■バンコクモーターショーの特徴はトレードショーに特化しているところ
■2年ぶりに訪れると、以前よりも日本車の勢いが衰えているように感じた
展示車の多くが電動車両となっていた
2022年3月23日から4月3日まで、タイの首都バンコク市郊外にある国際展示場(インパクト)で、バンコクモーターショーが開幕された。世界的な新型コロナウイルス感染拡大により、コロナ禍となってからは、欧米、アジアなど世界のモーターショーは軒並み開催中止や延期を余儀なくされたが、バンコクモーターショーは2020年こそ会期をずらして開催したものの、2021年はほぼ例年どおりと継続的に開催され、今年も無事開幕を迎えた。
バンコクモーターショーの特徴はトレードショーに特化しているところ。各出展メーカーが近未来を見据えてコンセプトカーを出品し競い合う東京モーターショーのような“万国びっくりショー”的なものではなく、モーターショーにきていただき、その場で購入してもらうことをメインとしている。そのため量販メーカーのブースでは広大なスペースに多数のテーブルを用意した商談スペースが設けられ、すぐにローンの与信ができるよういくつものファイナンス会社がブースに出張してローン審査ができるような体制を作っている。
現実路線を重視するショーで、昨年あたりから目立ってきたのが電動車。タイ政府も国内での車両電動化とともに、電動車両においてもアジアのハブ生産拠点になるべく政策を進めており、2022年からは電動車の車両購入補助金などのインセンティブがスタートしている。そのためか、出展ブランドのブースに並んでいる展示車の多くは、HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV(バッテリー電気自動車)となっていた。
こうなってくると存在感を増してきたのが、中国メーカー。上海汽車のMGブランドがまず現地でガソリン車の生産をはじめ、いまは長城汽車も撤退したGM(ゼネラルモーターズ)の工場を買収し、タイでHEVの現地生産を行っている(BEVもタイ国内で販売している)。MGは2023年にBEVの生産開始を予定している(長城汽車も2023年からタイでBEVの現地生産を予定している)。長城汽車はバンコク地域ではすでに複数のショッピングモールにショールームを出展し、元GMディーラーを自社ディーラーにしたりしている。またバンコク中心部のサイアムスクエアに充電施設を建設、ショールームも近々オープンを予定している。
欧米勢はBEVは抑えめにして、PHEVを積極的に展示していた。BMW iXやメルセデスEQ EQSなどはあくまで“客寄せパンダ”のような存在に見えた。
このようにショー会場では電動車の存在が目立っているのだが、タイ国内では、いまだに圧倒的な販売シェアを誇っているのは日本車。しかし、電動車といえばHEVがメインとなる日本メーカーはどこか蚊帳の外といった雰囲気が印象的であった。
いますぐどうなるという話ではないが、現地事情通に聞くと、「日本車の絶対的地位はまだまだ揺るがないのは事実ですが、昔よりは明らかに勢いが落ちています」とのこと。2年ぶりに訪れ、また長城汽車が大きめのブースを構えていたこともあり、あくまで個人の感想となるが、日本車のブース自体が狭く見え、また存在感も少々薄れているように感じてしまった。プレスカンファレンスでもGWM(長城汽車)とMG(上海汽車)が、盛り上がりを見せており、販売台数では日本車と天と地ほどの差がある中国車だが、ショー会場では日本車を“食ってしまっている”ようにも見えたのは、錯覚ではないことは確かだ。