この記事をまとめると
■中国の自動車メーカー「BYD」が日本にEVを導入することを発表した
■日本に導入3モデルはいずれも最新モデルであり、BYDの本気度がうかがえる
■EVバス普及でノウハウを持つBYDだけに、EVの普及に可能性を秘めている
3モデルの最新EVの導入を発表したBYD
7月21日に中国 比亜迪(BYD)の日本法人であるビーワイディージャパン(以下BYDジャパン)株式会社は日本の乗用車市場への参入決定を発表した。
国内に投入されるのはセダンタイプの「SEAL(シール/中国名:海豹[アザラシの意味])」、コンパクトハッチバックの「DOLPHIN(ドルフィン/中国名:海豚[イルカの意味])」、そして、クロスオーバーSUVタイプとなる「ATTO3(アット3/中国名:元PLUS)」の3台となり、いずれもBEV(バッテリー電気自動車)で、2023年1月にアット3、同年中ごろにドルフィン、さらに同年下半期にシールを順次発売予定していくとしている。
BYD汽車(汽車は中国語で自動車の意味)は、そもそも比亜迪股份有限公司の子会社であった西安泰川自動車責任株式会社が倒産し、その後「比亜迪(BYD)汽車」と社名変更して2003年に設立されている。BYDというバッテリーメーカー系子会社ということもあり、BEV生産に熱心な中国系メーカーのなかでも、とくにBEVのラインアップの充実に力を入れており、2022年4月に同年3月までにエンジン車の生産を終了していると発表したとも報じられている。
BYDブランドとしては、少し前に日本国内で新型BEVバスを発表した際に、「日本国内における乗用車販売は予定していない」といったコメントを出していたので、このコメントを額面どおり受け取れば短期間で方針転換が行われたことになるが、そういうわけでもなさそうだ。
日本国内において、すでにBYDブランドのバスはBEVバスの販売シェア全体の約70%となっており、中国メディアのなかには、今後日系や中国以外の海外メーカーが日本国内で本格的にBEVバスの販売を進めても、30~40%ぐらいは安定的にシェアを持ち続けていくだろうとしている。
今回の発表にあたり発信されたニュースリリースでは、いまだに電動車(HEV[ハイブリッド車]を除く)の販売が自動車販売全体の約1%にとどまるなど、普及が遅々として進まない日本市場について、日本の消費者の間には、車両価格の高さ、充電施設の不足、航続距離への不安、ラインアップの少なさなどがハードルになっていると、BYDジャパンが行った独自調査で判明したとしている。
リリースでは、そのような状況に風穴をあけるのがBYDのBEVであり、日本の消費者への選択肢のひとつとして日本国内の乗用車市場への参入を決定したとしている。
希望的憶測を述べさせてもらえれば、すでに世界規模でバスやトラックまでBEVをラインアップし販売を行っているため生産規模などの量産効果もあるBYDが日本の消費者にインパクトを与えるためにも、いま話題の軽自動車規格のBEVとなる、日産サクラや三菱eKクロスEVあたりの価格帯にドルフィンの価格が設定されれば、かなり強烈なインパクトを日本市場に与えることになると思っている。
あまりにも価格を引き下げれば、日本ではまだまだ中国製品に対してのイメージが、「安かろう悪かろう」となるので、かえってドン引きされ逆効果になってしまうだろう。
シールは2022年7月に中国国内でも発売になったばかりの最新モデル。以下ドルフィンは2021年8月、アット3は2022年2月に中国国内で発売されており、いずれもBYDのラインアップのなかでは現時点で最新モデルといってもいい存在になっている。
かつて中国では、「ラインアップされる日本車は最新モデルが少なく型の古いモデルばかりで中国市場をバカにしている」と、一部中国の消費者の間から不満が出たこともあったと聞いたことがある。最新型を導入すると、技術漏洩やコピー車が出現してしまうことを嫌ったとの話もあるが、BYDが最新モデルを日本へ導入することを発表したのを確認して思い出した話である。それだけでもBYDの本気度を強く感じている。