操縦安定性・燃費性能・静粛性のすべてを兼ね備えるのは難しい
ロードノイズは、タイヤの上下振動が車体に伝わって起こる騒音なので、サスペンションを含め路面変化や走行姿勢に対して、しなやかにタイヤが上下し、素早く上下動を収められることが望ましい。しかし、重い車体を支えるには、それなりにしっかりしたタイヤの作りであったり、サスペンション設定であったりするので、これも調和を取るのは容易ではない。
それでも、上級の大柄かつ重いSUV(スポーツ多目的車)でも、上質で静粛性に優れ、操縦安定性も高い車種はある。そうした重さのあるクルマの経験をEVに活用すれば、落としどころを見つけられるのではないか。
ほかに、タイヤ内部にスポンジ状の帯を張り付け、これによってタイヤ内部で起きる振動の共鳴音を抑える方法もある。この技術は、静粛性を求める高級車用タイヤで開発されたが、EVに用いればタイヤ騒音を減らす手段のひとつになる。日産アリアは、このタイヤを標準装着している。ただし、タイヤを構成する部品点数が増えるので、価格は上がることになる。
そのほか、確かなグリップにより操縦安定性を確保しながら、逆に転がり抵抗を減らして燃費(EVであれば電力消費)を抑えることを両立させるところは、EVもエンジン車も同様で、これも相反する性能の両立なので、開発を難しくする要因だ。
まとめれば、EV用タイヤは、上級車種のような重量のあるクルマや、静粛性を求める高級車など、高価で付加価値が高い車種にこれまで求められてきたタイヤ性能を、たとえ軽乗用EVであっても求められるようになるということだ。