405馬力は伊達じゃない! 圧倒的な加速力を示す
ドライビングポジションを合わせて発進する。今回「ローンチコントロール」機能が装備されたというので早速試す。手順はブレーキを踏んでDレンジに入れ、ステアリングの左右両パドルを同時に引く。この状態でアクセルを全開にし、6秒以内にパドル、ブレーキの順にリリースすれば最高のスタートダッシュが可能となる。従来の他社製にくらべ作動させ易い。この機能を試すのはテストコースだから可能なのだ。
そのままアクセル全開加速を続けると4速で180km/hの速度リミッターが作動するまで一気に加速できる。405馬力の動力性能は伊達でなく、力強い加速フィールはスポーツカーとして相応しい。
そのまま高速周回路を走ると速度リミッターは作動したまま。アクセルを緩めなければ5〜9速へと変速しない。マニュアル操作でシフトアップしていくと変速ショックは少なく、変速速度も速い。9速へと多段化したことでクロスレシオ化され変速時のトルク変動を少なく抑えられているのだ。またトルコンのスリップが抑えられているので直結感が強くDCTと変わらないような変速フィールといえる。この優れたATの特性が新型の魅力になっているといっても過言ではない。ちなみに100km/h巡航時に9速を選択するとエンジン回転数は1500rpmほどに抑えられ、高速巡航燃費を高めている。
サスペンションはフロント:ダブルウイッシュボーン、リヤ:マルチリンク式でモノチューブショックアブソーバーが採用されている。フロントはハイキャスター仕様で直進安定性としっかりとした操舵手応えを獲得し、リヤはレバー比1のショックアブソーバーが良好なロードホールディングを獲得している。さらにリヤデフには機械式LSDが標準装備され、FRスポーツとして高いコントロール性を獲得しているのだ。ブリヂストン ポテンザS007の19インチを前後に履き、フロントは255、リヤ275という極太設定で前後グリップバランスは最適化されている。
VDCをオフにしてコーナー区間でテールスライドを試すと、ハイグリップタイヤゆえトリッキーな特性を示したが、こうした走法を試せるのもテストコースの美点だ。
室内はバージョンSTで標準装備される「アクティブ・サウンド・コントロール」と「アクティブ・ノイズ・コントロール」が効果的に作用して音色のいいエンジンサウンドとノイズがリダクションされ高い質感とスポーティな雰囲気で居心地がよかった。
次にバージョンSの6速MTを試す。多くのスポーツカーファンは6速MTの走りが気になるはずだ。
室内に乗り込むとアルミ製の3ペダルとフットレストが綺麗にレイアウトされ操作性が高そうだ。アクセルペダルはオルガン式でコーナリング中のヒール&トウも正確に決められそう。ただフェアレディZには従来よりシフトダウン時に自動的に回転数を合わせてくれる「シンクロレブコントロール」が備わっていて、ヒール&トウが出来なくてもスポーツ走行が可能だ。ただ、このレブコントロール機能はスイッチでオフにすることができるので腕自慢は自らヒール&トウを行って楽しむことができる。
今回、6速MT自体は従来モデルをキャリーオーバーしているが、シフトロッドをチューニングし、小気味いいシフトフィールに仕上げているという。しかし、実際にはローやセカンドへのシフト操作は硬く、ストロークは短いものの操作動作は大きく感じる従来然としたものだった。とはいえMTのスポーツカーが稀少な現代のスポーツカー事情にあって6速MT仕様は存在意義が大きく、多くのスポーツカーファンが注目しているのは間違いないところだ。
6速MT仕様にもローンチコントロール機能が備わり、今回は試せなかったが、操作手順はブレーキを踏んで通常の発進操作を行いアクセル全開のままクラッチを繋げれば、トラクションコントロールとクラッチの制御アクチュエーターが最適な駆動力制御を行ってくれるという。アクセルを少しでも戻すと制御が解除されてしまうというから、これもテストコースやサーキットでだけ機能させられる装備といえるだろう。
通常のクラッチミートで発進しレブリミットまで引っ張って加速していくと、405馬力の強力な動力性能に圧倒される。1〜2速。2〜3速へとシフトアップするとリヤアクスルに強大なトルク変動が伝わり、かなり大きな変速ショックが発生する。このあたりはクロスレシオの9速ATが圧倒的にスムースだ。
室内の質感、快適性、エンジン音などもバージョンSTが大幅に上まわり、ベストバイとしてはバージョンSTの9速ATを勧めたい。
ただ新型フェアレディZはすでに大きな受注を抱えていて、また半導体やウクライナ侵攻問題などさまざまな状況変化から生産が逼迫していて、残念ながら2022年7月末で国内での受注を一旦停止するそうだ。